研究課題/領域番号 |
23684038
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
境 毅 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 助教 (90451616)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 惑星内部構造 / スーパーアース / 超高圧物性 / 物性実験 / 固体地球物理学 |
研究概要 |
地球型惑星を構成するもののうち基本的な酸化物単成分であるAl2O3について、329 GPa(圧力スケールによっては361 GPa)までの圧縮に成功した。Al2O3は177 GPa以上においてCaIrO3型の結晶構造を示し、この構造は約330 GPa、2000 Kまでの温度圧力範囲で安定であることが分かった。この構造について177 GPaから329 GPaまでの体積データに対して3次のBirch-Murnaghanの状態方程式(B-M EoS)、またはVinetの状態方程式(EoS)でフィッティングし、各種状態方程式のパラメータを得た。CaIrO3型のAl2O3は370 GPa程度の圧力でU2S3型への相転移が予想されているが、今回の結果は相転移前の圧力まで一定の精度で適用可能と思われる。 また地球型惑星のマントルの主要構成物質であるMgSiO3は、マントル最下部においてCaIrO3型の結晶構造を示し、ペロブスカイト構造から相転移を起こすことからポストペロブスカイト相と呼ばれている。この相は地球においてはマントル最下部に数100Kmの層を形成するにすぎないが、スーパーアースのマントル深部においては大きな体積比率を持つと期待される。本研究ではこのポストペロブスカイト相に関して290 GPaまでの圧縮データを取得し、各種状態方程式のパラメータを得た。これらの結果はスーパーアースのマントルの密度構造などの議論に有用であることが期待される。 一方、地球型惑星の核の主要構成物質であるFeおよびFe-Ni合金についてもそれぞれ279 GPa、272 GPaまでの圧縮データを取得した。これらのデータに関しても同様に状態方程式のパラメータを決定した。その結果、鉄にニッケルが固容した場合に329 GPa、5000-6000Kで13-15%ほど断熱体積弾性率が減少することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度目標であったAl2O3について300 GPaを超える圧力までの高圧実験に成功した。一方計画にあったSiO2については2011年に他の報告があったため、より現実に近くまたマントルの主要構成物質であるMgSiO3組成のポストペロブスカイト相の高圧実験に着手し、290 GPaまでの圧縮データの取得に成功している。また平成25年度の計画にあったFe, Fe-Ni, Fe-Ni-S合金等の金属に関する研究についてもすでに250 GPa以上でのデータが得られ、前者は現在国際誌に投稿中、後者は既に掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はMg3Al2(SiO4)3や(Mg,Fe)SiO3、(Mg,Fe)Oといった固容系に拡張し、密度や体積弾性率といった物性値に与えるAlやFeの組成効果について明らかにする。実験手法としてはこれまでと同様に、マイクロ加工・マイクロサンプリングを駆使して300 GPaまでの圧力に及ぶ高温高圧実験を行う。高温高圧発生にはレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いる。圧力決定のための標準物質として金(Au)または白金(Pt)を用いる。Au/Pt は高温発生のためのレーザー吸収材としての役割も果たす。高圧下の試料に対して大型放射光施設SPring-8 BL10XUにおいて高温高圧その場粉末X線回折実験を行い、結晶構造、密度、圧縮率といった物性データを取得する。半期あたり2回の実験を行い低圧力の条件から300 GPaにおよぶ幅広い圧力範囲でのデータを取得する。
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