研究課題
地球型惑星の核の主要構成物質であるFeおよびFe0.9Ni0.1合金の状態方程式について先行研究との比較や種々のエラーの検討など、詳細な議論を行った。圧力スケールの問題を加味すると、329 GPa, 5000 KにおいてFe0.9Ni0.1合金はFeに比べて7.3-7.8%ほど小さな体積弾性率を示す。また同条件において、地球の内核の密度は、Feに対しては3.4(1)-5.1(1)%、Fe0.9Ni0.1合金に対しては4.7(1)-6.5(2)%小さいことが分かった。この内容は国際誌(Physics of the Earth and Planetary Interiors)に掲載された。新たに確立されたFeおよびFe0.9Ni0.1合金の状態方程式と、これまでに報告したFe-Ni-Si合金(Asanuma et al. 2011)やFe-Ni-S合金の状態方程式(Sakai et al. 2012)とを比較し地球に応用すると、Ni 5wt.%の時に硫黄であれば7.5(4) wt.%、ケイ素であれば6.2(3) wt.%の量が固溶することで地球内核の密度を説明できる。一方、マントル側のケイ酸塩においてAl成分が物性に与える効果をみるためにMg3Al2(SiO4)3パイロープ組成のポストペロブスカイト相を185 GPa, 3000 Kにおいて合成した。185 GPaにおけるMgSiO3およびAl2O3組成のポストペロブスカイト相と体積を比較すると、MgSiO3単成分(Al2O3成分0%)を基準としたとき、パイロープ組成(Al2O3成分25%)は+0.1%、Al2O3単成分(Al2O3成分100%)は+0.6%となった。ここでAl2O3成分が増加するにしたがって、体積が増加する関係が見て取れるが、その関係は単純な線形関係ではなく、やや下に凸の放物線を描くことが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
申請時の年度目標であったFe-Ni-Si合金(Asanuma et al. 2011)やFe-Ni-S合金の状態方程式(Sakai et al. 2012)についてはすでに国際誌に結果を報告している。これらの論文の議論の中で、むしろ基本となるFeやFe-Ni合金についての研究が先行研究では不十分であったことから、これらの物質について新規に約300GPaまでの状態方程式を確立した。この結果は地球はもちろん他の惑星にも適用可能である。本年度目標であったマントル側のケイ酸塩においてAl成分が物性に与える効果をみるためにMg3Al2(SiO4)3パイロープ組成のポストペロブスカイト相を185 GPa, 3000 Kにおいて合成し、X線回折実験により格子体積を決定した。これまでに得られているMgSiO3やAl2O3の結果と比較し、Al成分が体積に与える影響を明らかにした。MgSiO3単成分については第一原理計算による状態方程式を得た(共同研究の成果)。この結果を、実験の結果と比較したところ1 TPaまで整合的であることが分かった。これらの成果は研究開始当初の計画には無く予定していなかった成果であり、第54回高圧討論会で発表した。また、地球より大きな惑星内部を研究するためにさらなる高圧力の発生を目的とした技術開発を行った。ナノ多結晶ダイヤモンドおよび単結晶ダイヤモンドを集束イオンビーム加工装置で加工し、30ミクロン程度のマイクロアンビルを作成した。これをダイヤモンドアンビルセル内に封入して加圧する2段式加圧法を開発した。試行段階において既に337GPaまでの圧力発生に成功している。今後の改良によりさらなる高圧力発生が期待される。
Mg3Al2(SiO4)3パイロープ組成のポストペロブスカイト相のさらに高圧力までの圧縮実験を行い、状態方程式を得る。そこから体積弾性率などの物性値を導き出し、MgSiO3単成分やAl2O3単成分の場合と比較し、Al成分が物性に与える影響について考察する。マイクロアンビルを用いた2段式加圧法の開発を引き続き行い、封圧の向上、ナノ多結晶ダイヤモンドの粒径の最適化などを通して、これまでのダイヤモンドアンビルセルでは不可能であったさらなる高圧力発生を目指す。これまでに得られたMgO, Al2O3, MgSiO3, Mg3Al2(SiO4)3, Fe, Fe0.9Ni0.1の状態方程式をもとに、他のSiO2や鉄成分に関する議論を考慮しつつ、単純な組成でのスーパーアースを仮定し、その内部構造、密度分布、惑星サイズなどについて議論する。これまで全くなかった300GPa領域での実験データに基づいた実験的モデルを提唱することを目的とする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (16件)
Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: 228 ページ: 114-126
10.1016/j.pepi.2013.12.010
巻: 228 ページ: 106-113
10.1016/j.pepi.2013.11.001
American Mineralogist
巻: 99 ページ: 98-101
10.2138/am.2014.4463
Review of Scientific Instruments
巻: 84 ページ: 113902
10.1063/1.4826497
Geophysical Research Letters
巻: 40 ページ: 1-6
10.1002/grl.50992
Earth and Planetary Science Letters
巻: 373 ページ: 102-108
10.1016/j.epsl.2013.04.023
Nature communications
巻: 4 ページ: 1737
10.1038/ncomms2733