研究実績の概要 |
地球型惑星のマントルの主要構成物質であるMgSiO3 post-perovskite相(以下PPv相)の高温高圧状態方程式を確立した。レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルによる高温高圧実験と放射光施設SPring-8 BL10XUにおける高温高圧その場粉末X線回折実験によりPPv相の格子定数を決定した。高圧下の物質の状態方程式としては極限圧縮環境下でより物理的な意味を持つAP2-EoSモデル(Holzapfel, 1998)とKeane-EoSモデル(Keane, 1954)を適用した。得られた状態方程式を用いて1000 GPa, 6000 Kまでの圧縮挙動および各種物性値について算出した。Perovskite相(Pv相)に関する先行研究と比較することで、Pv-PPv相転移に伴って密度が約1.2(3)%増加することが分かった。これは先行研究の結果(+1.5(5)%)とも整合的である(Komabayashi et al. 2008)。また、高温条件下においてバルク音速が約1.3(4)%減少することを初めて実験的に明らかにした。AP2-EoSを基準とした場合、Keane-EoSおよび第一原理計算による圧縮挙動(体積)は1000 GPa, 6000 Kまで±1.5%以内に納まっており、広範な温度圧力範囲で実験モデルと理論モデルに一定の整合性があることを明らかにした。 またこれまで実現不可能であった400 GPa以上の高圧力実験を可能にするために、2段式ダイヤモンドアンビルセルの開発を行った。単結晶ダイヤおよびナノ多結晶ダイヤモンドを素材として、集束イオンビーム加工装置を用いて3ミクロンの先端径を持つ極小アンビルを作成することに成功し、上下一体型で作成するという新しいアイデアにより極小アンビルでの高圧発生を可能にした。この結果は、Review of Scientific Instrument誌に掲載された(Sakai et al. 2015)。
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