さまざまなモデル群を駆使した古海洋変動に関する数値シミュレーションを行うための手法を開発するという本研究の目的を達成することができた。その手法を用いて、海洋大循環モデル(COCO)による氷期の海洋深層循環変動に関する感度実験、簡易気候モデル(MIROC-lite)を用いた氷期の大西洋深層循環の再現および退氷期の大西洋深層循環の再現シミュレーション、海洋物質循環モデルを用いた氷期の炭素循環に関するシミュレーションなど、氷期の気候変動に関するさまざまな数値シミュレーションを実施することができた。 氷期の海洋循環・炭素循環に関して、氷期において海水の水塊年齢が現在に比べて著しく古くなっていることが古海洋データから示唆されており、その再現を数値シミュレーションにより試みたが、その再現は難しいという結果を得た。古海洋データの解釈を再検討する必要性に加えて、モデルにおける水塊年齢の再現性にも問題があることが示唆された。本年度は、これまでの海洋物理モデルにおける鉛直拡散係数分布についての取扱いを再検討し、潮汐による影響を陽に考慮した3次元分布を与えることで、海水の水塊年齢をより現実的に再現することができるという新しい知見も得ることができた。海洋物質循環モデルを用いた氷期の海洋炭素循環、およびMIROC-liteを用いた退氷期の大西洋深層循環に関するシミュレーションは、それぞれが修士学生の研究課題となり、本年度それらの内容が修士論文としてまとめられた。
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