研究概要 |
かんらん石粉末を出発物質として、ピストンシリンダーを用いて(1200C, 1GPa, 4日間)、異なる空隙率(1, 3, 10, 25 %)の焼結体を作成し,水熱実験に用いた.水熱実験の条件は,250℃,飽和蒸気圧、pH13.5のアルカリ水溶液である.4本の焼結体はPtジャケットに覆われ,1方向のみから水がアクセスする.かんらん石―水系では蛇紋石,ブルース石,マグネタイトが生成するが,昨年度まで行ってきた鉱物粉末を用いた実験では,反応が管内で一様に進行していたのに対して,焼結体を用いた実験では,反応管の入り口付近ではブルース石が卓越し,遠い部分では蛇紋石のみが生成するという反応管内の位置による反応生成物の系統的な変化が観察された.入り口付近において,ブルース石はかんらん石の形状を保持しながら置換する組織を示しており,かんらん石のシリカ成分の溶脱反応を示唆する.ブルーサイト帯の厚さは初期の空隙率が小さくなるほど薄くなり,空隙率によって拡散速度がコントロールされていることを示唆する.一方,反応管の入り口から遠い部分における蛇紋石のみの形成はかんらん石からMgが選択的に溶脱して進行したと考えられる.これは、体積膨張が制約される焼結体においてかんらん石の加水分解反応の駆動力が大きい際に,体積変化の小さい反応経路を選択している可能性がある. 離散要素法のシミュレーションを開発し,自由な境界が与えられた場合のかんらん石の加水反応-流体流動-破壊についての関係を検討した.岩石の外部から加水反応が進行して,体積が膨張することにより亀裂が発生し,その部分でまた反応が進行するという正のフィードバックが起こる.これは蛇紋岩に観察されるメッシュ組織に類似しており,天然での反応プロセスをよく再現していると考えられる.
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