研究概要 |
地球内部の大部分で「超塑性」流動が起きている可能性が示された。(i)二相共存試料において、第二相分率の増加と共に細粒化し(Tasaka & Hiraga JGR 2013)、それに伴い「超塑性」が発現しやすくなる(Tasaka, Hiraga & Zimmerman JGR 2013)。この結果は、多相系である地球内部において、「超塑性」の出現条件が広がる。 (ii)「超塑性」変形下、粒界すべりと同相粒子の合体により、第二相粒子が最大圧縮軸に集合化する。本構造が花崗岩起源マイロナイト中に見出され (Hiraga et al. Geology 2013)、少なくとも地球内部の一部で「超塑性」が発現していることが明らかになった。(iii)「超塑性」変形下での鉱物粒径を決める粒径と第二相分率の関係(ゼナー則)が、10ミクロンから2 mmの粒径を持つ天然ペリドタイト中で成立している(Tasaka, Hiraga & Michibayashi JGR 2014)。これは、「超塑性」が細粒岩石のみならず、平均的な粒径を持つマントル岩でも発現している間接的証拠である。(iv) 応力・歪速度間が線形関係であるオリビンの「超塑性」下で、強い結晶選択配向が生じる ((Miyazaki et al. Nature 2013)。この選択配向が生じる条件を上部マントルに適用したところ、マントルアセノスフェア内の地震波速度異方性の深度分布と一致した。選択配向は転位(非線形)クリープに固有のもので、地震学的に見出される異方性は、上部マントルで転位クリープが生じている証拠と考えられてきたが、転位クリープでアセノスフェアが流動するに必要な粒径(数cm)もしくは差応力(数十MPa)は、マントル由来の岩石の平均粒径やアセノスフェア内の推定応力0.1 MPaオーダーと大きく異なり、矛盾があった。転位クリープと比べて、より細粒・低応力条件下で発現し、さらに選択配向を作るマントル「超塑性」は、地震波の観測結果と鉱物物理の間の矛盾を解決する。
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