研究課題
本年度は予定通り、内部抵抗加熱式DACを放射光X線と組み合わせて、鉄-ニッケル合金、および純鉄について高温高圧その場観察実験を行った。SPring-8(兵庫)とESRF(フランス、グルノーブル)にて放射光実験を行った。特に、SPring-8におけるX線回折実験においては200万気圧、5000Kまでの高温高圧を発生させ内部抵抗加熱式DACの温度上限を先行研究より(225万気圧、3400K)大幅に伸ばした。平行して、鉄-ニッケル系の熱力学データ導出のための実験も行った。Fe_<0.9>Ni_<0.1>合金を出発物質に、100万気圧、2500Kまでの範囲で、面心立方(FCC)構造-六方最密(HCP)構造相転移境界を精密に決定した。相転移境界は、従来報告されている通り純鉄に対して低温側に位置しているが、2相共存ループの幅はおよそ6GPaであり、従来のレーザー加熱DACによるもの(10-20GPa)よりもかなり狭いことがわかった。相転移境界の温度圧力傾きは従来の見積もりよりも大きく、先行研究で提案されていた内核条件までFCC領域が広がっている可能性は否定された。また、合金の高温高圧下における格子体積も取得し、次年度以降に行う予定の熱力学データベース構築のための基礎データも取得できた。以上の結果は、国際誌Physics and Chemistry of Mineralsに投稿し、出版された。また、ESRFにおいては純鉄について高温高圧X線非弾性散乱実験を行った。これは純鉄の密度-速度関係を明らかにするための実験である。300-1100K、30-80万気圧の範囲で測定を行い、HCP鉄の密度、速度を同時測定した。このデータは、HCP鉄のグルナイゼンパラメータを見積もる際にも重要である。以上の結果は、国際誌Earth and Planetary Science Lettersに投稿し、受理された。
1: 当初の計画以上に進展している
内部抵抗加熱DACの技術開発についてはすでに200万気圧、5000Kを達成しており、当初の4年間での目標(250万気圧、3500K)をすでに温度については超えている。またFe-Ni系の相平衡についてはFCC-HCP境界を精密に実験で決定でき、論文として出版することもできた。以上の理由から当初の計画以上に進展していると考えられる。
当初の予定通り、次年度も実験に集中する。内部抵抗加熱式DACの技術開発を継続して行い、250万気圧、5000Kを目指す。Fe-N1系の相平衡は、次年度は融点決定を試みる。
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Physics and Chemistry of Minerals
巻: 39 ページ: 329-338
10.1007/s00269-012-0490-3
Earth and Planetary Science Letters
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