研究課題/領域番号 |
23684045
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
薮下 彰啓 京都大学, 工学研究科, 助教 (70371151)
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キーワード | 宇宙科学 / 化学物理 / 天文 / 光化学反応 / 星間化学 |
研究概要 |
星間空間における分子の生成・消滅反応については、星間分子雲に存在する宇宙塵表面での化学反応が重要な役割を果たしている。氷星間塵を模した氷表面での反応研究の多くは氷表面での生成物を同定する研究手段がとられており、素過程、特に生成分子のエネルギー状態に関する研究はほとんど無い。本研究では、氷星間塵での光化学反応実験により、脱離フラグメントのエネルギー状態を詳細に調べ、その反応機構の解明を行うことを目的としている。 氷に光を照射すると氷内部で光反応が進むだけでなく、氷表面から様々なフラグメントが脱離する。脱離フラグメントの電子、振動、回転励起状態は氷表面での光反応プロセスを反映しており、その脱離フラグメントのエネルギー状態を調べる事で、従来の「氷そのものの変化」を見る方法では手に入らない情報が得られる。当該年度では、高真空・極低温の宇宙環境条件を実験室内に再現するための超高真空チャンバーの製作を行なった。チャンバーに4KGM冷凍機を装着し、冷凍機先端に装着した擬似氷星間塵作成用基板を任意の温度でコントロールできるようにした。4KGM冷凍機にはXYZステージを装着し、基板の位置を調整できるようにした。氷星間塵での光反応用レーザーと脱離フラグメントのイオン化用レーザーの入射位置に合わせて4KGM冷却機を伸長した。4KGM冷凍機先端に、設計・製作したサンプルヘッドを装着し、そこに氷星間塵作成用白金基板を取り付けた。4KGM冷凍機における冷却試験では白金基板温度を4時間弱で80Kに冷却でき、その後約30分で8.5Kまで冷却できることが確認できた。基板上に目的以外の物質が付着するのを避けるために、4KGM冷却機周囲に液体窒素を用いたシュラウドを設計・製作した。レーザーイオン化では測定できない脱離フラグメントを測定するための四重極型質量分析計を装着した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
装置としての製作は完了し、温度試験等も実施した。研究実施計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、光反応用真空紫外レーザーと脱離フラグメント検出用レーザーを稼働させて、氷表面での光化学反応により生成した脱離フラグメントのエネルギー状態の計測を試みる。変更点として、氷表面上での反応過程を調べるため、フーリエ変換赤外反射吸収分光法による高時間分解測定を同時に試みることにした。
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