研究概要 |
始原隕石に含まれる難揮発性包有物、CAIは太陽系最古の物質であることが知られそいるが、その形成メカニズムや母天体形成領域までの運搬機構などは不明なままである。これらを解明する手がかりとして、CAIが母天体集積以前に宇宙空間に浮遊していた期間、「星雲浮遊年代」をKr同位体組成から決定することが目的である。また、I-Xe年代法を用いた形成年代測定も有益な情報である。 CAIに含まれるKr同位体は極めて微量であり、例えば100万年間宇宙線照射を受けたCAI約0.1mgに含まれる^<81>Krの原子数はおよそ数千以下である。このような極微量のKr原子を測定するには、レーザー共鳴によるイオン化と飛行時間型質量分析計(TOF-MS)を組み合わせた装置TOF-RIMSが必要である。今年度は、このTOF-RIMS分析装置の設計・開発を行った。 KrおよびXeの高いイオン化率を得るために、Nd:YAGレーザーを励起源とした色素レーザーの選定を行った。イオン化に必要な波長はそれぞれ約216,256nmであるが、それらについて高いレーザー光出力(3.5,4mJ/pusle,width=10ns,diameter=8mm)を得ることに成功した。さらに、これらの異なる波長のレーザー光を同一点に集光するための装置改良も行った。こめ結果、簡便な切り替え作業により2種類のレーザー光を用いたイオン化が可能となった。 飛行時間型質量分析部は、高感度化のためにコールドトラップによる濃集させてイオン化する手法を採用した。そのためのイオン光学シミュレーションやコールドトラップ部の温度分布シミュレーションを行い、TOF-MSのイオン源・フライトチューブの設計を行った。現在、当該施設附属工場にて制作中であり、4月中にはテスト運用を開始する予定である。これらの成果は日本地球惑星科学連合2012年度連合大会にて発表する予定である。
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