研究課題
研究目的はインフルエンザウィルスのチャネルタンパク質の開閉機構の解明のために、光によって、タンパク質の高次構造を1分子ごとに決定する新たな手法を開発することにある。NMRやX線によって得られた平均構造から、チャネルの開閉に伴い、その高次構造(特に四次構造)が大きく変化すると予想されている。しかし、このモデルだけでは、実際の系での機能を理解し、制御するのは難しい。それは、生体膜中では、開いた状態と閉じた状態にあるチャネルや、異なる種類のタンパク質が混在し、それぞれが組織立って機能を呈しているからである。このため、1種類のタンパク質を取りだして平均構造を観測するだけでは情報として不十分である。そこで、本課題では、混在系の中から目的のタンパク質を選択し、その高次構造を1分子観測できる方法論を確立する。この目標を達成するため、平成23年度は、「温度数Kの三次元レーザー走査型の顕微分光システム」の開発をおこなった。その結果、405nm、445nm、532nm、635nmの4色のレーザーで同時励起できる顕微システムの構築に成功した。成功の鍵は、顕微鏡で用いる光学部品をすべて反射光学系をもちいたことによる。また、この技術の核となる三次元走査機構が実際に動作することを実験的にたしかめた。数Kの実験を想定し、対物レンズと試料は数K中で固定したまま、レーザーの光学特性を変えるだけで、試料上をレーザースポットが三次元に走査できるようにした。来年度以降は、タンパク質試料の制作や、分光測定を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
23年度は、課題Aとして試料調整、課題Bとして顕微システム開発、課題Cとして装置の高安定化を目標にした。このうち、課題Bと課題Cは順調に進んだ。特に、課題Cは来年度分の一部も達成している。一方で、課題Aは達成できておらず、来年度に達成したい。よって、(2)のおおむね順調に進展している。という評価である。
上記のように、24年度に達成すべき課題は当初から予定していた課題Cと、23年度に積み残しになった試料作製である。どちらも、23年度にすでに下準備は終えており、24年度中に達成できると考えている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Physica Procedia
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