研究概要 |
研究目的はインフルエンザウィルスのチャネルタンパク質の開閉機構の解明のために、光によって、タンパク質の高次構造を1分子ごとに決定する新たな手法を開発することにある。NMRやX線によって得られた平均構造から、チャネルの開閉に伴い、その高次構造(特に四次構造)が大きく変化すると予想されている。しかし、このモデルだけでは、実際の系での機能を理解し、制御するのは難しい。それは、生体膜中では、開いた状態と閉じた状態にあるチャネルや、異なる種類のタンパク質が混在し、それぞれが組織立って機能を呈しているからである。このため、1種類のタンパク質を取りだして平均構造を観測するだけでは情報として不十分である。そこで、本課題では、混在系の中から目的のタンパク質を選択し、その高次構造を1分子観測できる方法論を確立する。 この研究課題を遂行するために、本年度は(1)課題Bの仕上げとして、3次元レーザー走査型の1分子分光装置の評価と(2)課題Aとして、プロトンチャネルのモデル分子の製作および評価をおこなった。まず、(1)の装置の評価として、波長405, 532, 635 nmで温度1.5 Kにある量子ドットの発光イメージングをおこなった。得られた試料位置における3次元のスポット像(3次元点像分布関数)のサイズは、光学シミュレーションから得られた理想値の1.1倍以内であり、非常に高い就航性能を持つことを確かめた。次に(2)のモデル分子の製作では、プロリンを20個つなげて出来るポリプロリン分子の両端に2色の色素を結合したペプチドを合成し、蛍光測定により欲しい分子が製作されていることを確認した。さらに、課題Cとして行ったきた装置の安定化の投稿論文がChemical Physics誌に掲載された。
|