研究概要 |
化学反応経路をコンピュータで系統的に自動探索できれば、信頼できる反応解析、効率的な反応設計、および、未知反応予測が可能となる。これは長年不可能であるとされてきたが、申請者らは、二種類の反応経路自動探索法(GRRM法およびAFIR法)を開発し、これを可能にした。本研究では、酵素反応等の生化学反応を扱えるように拡張し、生化学反応の解析および予測へと応用する。23年度は、上述の二つの方法を実装したGRRMプログラムを、ONIOM法およびMicroiteration法を併用し、酵素反応を扱えるように拡張した。実際には、Isopenicillin N synthase (IPNS)について、水分子を含む、全体で10,891原子からなるモデルで扱い、その中の65原子からなる反応中心に対してAFIR法を適用した。反応中心に含まれない10,826個の原子の動きも、Microiteration法によって考慮されている。その結果、実験のX線構造から出発して、反応の第一ステップを、自動的に明らかにすることができた。第二ステップ以降について、現在検討中である。一方、酵素反応では、反応中心に金属原子が存在することが多いため、金属触媒反応を扱えることが必須である。そこで、AFIR法を有機金属触媒サイクルに応用できるように拡張した、その結果、ヒドロホルミル化反応を例にして、触媒サイクル一周丸ごと自動解明することに、世界で初めて成功した。また、GRRMプログラムのインプットファイル作成において、数千、数万原子の座標入力を人間が行うことは困難なため、それを簡便に行うためのインターフェイスプログラムの開発も併せて行った。
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