研究概要 |
酸素同位体不斉(^<18>O/^<16>O)を有するキラルヒドロベンゾインの高感度不斉認識に成功した。ヒドロベンゾインのエナンチオトピックなヒドロキシ基を酸素18で標識した酸素同位体キラルジオールを精密不斉合成し、本化合物存在下、ピリミジン-5-カルバルデヒドとジイソプロピル亜鉛との不斉自己触媒反応を行うことにより、酸素同位体不斉に相関した絶対配置を有するピリミジルアルカノールが高い鏡像体過剰率で得られることを明らかにした。本結果は、酸素同位体間のわずかな違いに基づく微小不斉が、不斉反応のエナンチオ選択性を制御したことを証明した最初の例である。不斉が著しく増幅する不斉自己触媒反応と組み合わせることにより、酸素同位体不斉の識別に始めて成功したものである。なお、酸素同位体キラル化合物は、キラルカラムにより分割した光学活性原料を基に不斉合成することで、他のキラル要因混入の可能性を排除した。 アキラルアルデヒドが形成するアキラルな単結晶のエナンチオトピック面を気体状態のジイソプロピル亜鉛に曝すことにより,エナンチオ選択的炭素-炭素結合形成反応が進行し,キラル化合物を与えることを見出した。単結晶中でのアルデヒド分子の配向を利用した不斉合成反応であり、単結晶表面の2次元不斉を認識した初のエナンチオ選択的炭素-炭素結合形成反応である。単結晶に気体の試薬を作用するため,キラル触媒等の不斉源や溶媒を用いずに不斉合成が可能となった。さらに生成物であるピリミジルアルカノールは、不斉増幅を伴う不斉自己触媒として作用するため、引き続く不斉自己触媒反応により、結晶表面の不斉と相関した、ほぼ光学的に純粋なキラル化合物を合成することに成功した。
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