研究実績の概要 |
右巻きないしは左巻きらせん構造を有するメソポーラスシリカの高感度不斉認識を達成した。キラルなアニオン性界面活性剤を用いて調製された右巻き過剰なメソポーラスシリカ存在下で不斉自己触媒反応を行うとメソポーラスシリカのらせん方向に相関したSの絶対配置を持つピリミジルアルカノールが高鏡像体過剰率で生成することを見出した。また、左巻き過剰なメソポーラスシリカは逆のR体のピリミジルアルカノールの生成を誘導した。本結果は、不斉自己触媒反応が、らせん状メソ細孔のキラリティーを高感度に識別した結果であり、メソポーラスシリカをキラル無機触媒として使用し、高エナンチオ選択的反応を実現した最初の例である。 分子内に不斉活性部位が複数存在する人工的な巨大分子を創成し、キラル巨大分子のキラリティーを識別可能な不斉自己触媒反応を達成した。すなわち、自己増殖および自己改善能を有するキラル高分子の創製研究を行い、多点反応型不斉自己触媒反応を開拓した。アルキルシラン骨格の末端に不斉活性部位を6個導入したヘキサキスピリミジルヘキサアルカノールを合成し、これを不斉自己触媒として用い、対応するヘキサアルデヒドへのジイソプロピル亜鉛の付加反応を行ったところ、小過剰に存在していた(S,S,S,S,S,S)-体のみが優先的に自己増殖し、異性体比 98/2/0/0/0/0/0、鏡像体過剰率が99.5% ee以上まで向上したキラル巨大分子を得ることができた。生成物の鏡像体過剰率が99.5% ee以上へと増幅しながら、異性体比が向上する自己改善機能をも新たに見出した。 窒素原子を同位体により置換することによって初めてキラルとなるアミン化合物を不斉開始剤として用い、ピリミジンカルバルデヒドへのジイソプロピル亜鉛不斉付加反応を行う不斉自己触媒反応を検討した。窒素同位体不斉を高感度に検出可能な不斉誘導現象を見出しつつある。
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