研究課題
高圧下で酸素アニールすることで得られるペロブスカイトSrFeO_3は、低温でらせん磁性を示すことが知られていた。しかしながら最近我々のグループがこの物質の大型単結晶育成に成功し、ホール抵抗測定などにより基底状態が単純ならせん磁性でないことが明らかになりつつある。本年度は、トポロジカルホール効果を示すことが示唆された立方晶ペロブスカイトSrFeO3において、スカーミオン相(特異な渦状スピンの長周期構造をもつ相)が実現しているかどうかを確認するため、FZ法と高圧合成を組み合わせることで大型単結晶を作製し、マックスプランク研究所のKeimer教授らのグループと共同で、PSI(スイス)において磁場中における小角中性子散乱(SANS)実験を行った。その結果、トポロジカルホール効果を示す相において、単一の伝搬ベクトルでは説明できない新しいトポロジカルらせん磁性相が実現していることが示唆された。今後、4軸中性子回折系を用いた実験により、詳細な磁気構造の決定を行う予定である。次に、共同研究者の上田健太郎氏がパイロクロア型モリブデン酸化物(Y,Tb,Cd)2Mo2O7の高圧合成に成功し、パイロクロア格子上の局所的な三角格子に配置した非共面的なスピン構造に由来するトポロジカルホール効果を観測することに成功した。中性子回折による詳細な磁気構造を決定するため、現在高圧下単結晶作製を試みている。
1: 当初の計画以上に進展している
小角中性子散乱により、SrFeO3においてまったく新しいトポロジカルらせん磁気相の存在を示唆する結果が得られたため。また、トポロジカルホール効果を示す新しい系、パイロクロア型モリブデン酸化物(Y,Tb,Cd)2Mo2O7の高圧合成に成功したこと。
新しいトポロジカルらせん磁性相が示唆されたSrFeO3に着目し、SrサイトのBa置換系やFeサイトのCo置換系などの周辺物質を積極的に開拓する。さらに、中性子散乱を用いた磁気構造解析を進めていく。
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Physical Review Letters
巻: 108 ページ: 156601-1-5
10.1103/PhysRevLett.108.156601
Physical Review B
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http://www.qpec.t.u-tokyo.ac.jp/ishiwata_lab/publication.html