研究課題/領域番号 |
23685016
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉川 裕之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00314378)
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キーワード | レーザー / バイオセンサー / 酸化酵素 / 後方散乱光 / 酸化重合 |
研究概要 |
反応溶液中にレーザーを集光して、後方散乱光から生体分子間相互作用を検出する光ピックアップ型バイオセンシング技術として、本年度は以下の2種類の異なるアプローチを提案し、研究を進めた。1)集光.レーザーによるアニリン系分子のナノ凝集体形成を利用して酸化酵素反応を検出する新しい仕組みを考案し、検出時間や感度などの評価、検出原理の解明に取り組んだ。可視連続発振レーザー光を光学顕微鏡を用いてサンプル中に集光し、メカニカルシャッター、電動ステージ、データ集録ボードを自作プログラムで制御することによって後方散乱光強度の時間変化をレーザー照射時間の関数として計測するシステムを構築した。グルコースと酸化酵素の混合溶液にフェニレンジアミン分子を加え、本システムを利用して波長532nmのレーザーを集光した時の後方散乱光強度を計測した結果、強度が極大値を取る時間がグルコース濃度とともに早くなり、1μM-1mMの範囲でグルコースが定量検出できることを実証した。電子顕微鏡や原子間力顕微鏡による構造観察や、散乱および吸収スペクトル解析から、レーザー集光スポット内でフェニレンジアミン分子が光化学的に酸化重合反応を起こし、集光スポットと同程度のナノ凝集体が時間とともに成長していくメカニズムを解明した。2)集光レーザーで局所的に銀ナノ構造体を作製し、吸着した対象分子を表面増強ラマン散乱により解析する技術開発に取り組んだ。レーザー照射エネルギーや還元剤の濃度と、得られた銀ナノ構造体のサイズや形状、プラズモン特性、ラマン散乱強度の関係について調べ、作製条件を最適化した。本手法を利用して、マイクロピペット内部に銀ナノ構造体を組込んだシングルセルラマン散乱解析ツールを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェニレンジアミン分子を用いて酸化酵素反応を検出する系においては、測定時間や感度において従来型のグルコースセンサーを上回る結果も得られており、現在詳細なデータを測定して論文化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
酵素反応に伴うナノ凝集体の形成が後方散乱光強度変化を与えるメカニズムに関して未解明な点があり、シミュレーションなども用いて解析を進める。ラマン散乱を利用する系では、現在使用している分光器の感度が十分でないため、次年度に高感度分光システムを導入することによって研究を進展させる。
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