研究課題/領域番号 |
23685017
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
吉川 元起 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (70401172)
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / ナノバイオ / ナノメカニカルセンサー / MSS / 自己検知 |
研究概要 |
本研究では、申請者が世界に先駆けて開発した超高感度ピエゾ抵抗膜型表面応力センサー素子(Membrane-type Surface stress Sensor,MSS)に着目し、人間や犬の嗅覚と同様に、多種多様な「ニオイ」をパターン認識によって識別する「ファジー嗅覚センサー」の実現を目指すものである。これまでに作製した第一世代のMSSチップは、MSSの動作原理をいち早く実験的に確認するために作製した一次元配列の試作品であったのに対し、本年度は、作製プロセスを精密に作り込み、センサー素子を二次元配列した第二世代のチップを、有限要素解析によって精密に設計・デザインし、EPFL(スイス)との共同研究によってチップを作製した。こうしてできあがった第二世代のチップの性能を、実験的に検証したところ、第一世代と比較して、感度がさらに一桁近く向上していることが明らかになった。これは、カンチレバー型のセンサーと比較して、100倍以上の感度に相当し、極めて高い性能を実現することに成功した。このMSSチップのガスセンサーとしての応用の例として、ニオイによって肉の種類を判別可能であることを実証した。その際、二次元配列センサー素子からのシグナルを、そのまま画面上に色の変化として表示させることにより、ニオイを可視化させることに成功し、これに関して特許を申請した。さらに、MSSやカンチレバーセンサーにおいて、長年にわたって問題となっている、測定結果の「再現性の低さ」を克服する「両面被覆」という画期的な方法を考案した。MSS構造であれば、メンブレンの周囲が、強固なバルクシリコンによって固定されている細幅のブリッジで支持されているため、メンブレンのたわみだけでなく、メンブレンの膨張や収縮によっても十分に高いシグナルが得られることを、有限要素解析と実験の両面から実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的に対して、おおむね順調に研究を進めることができた。しかしながら、先の東日本大震災に関連して、研究費の交付が遅れたため、実験装置の納品が年度末になってしまい、一部の実験が思うように進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度中に、各種シラン系の自己組織化膜によるセンサー表面の修飾を、インクジェット法によって作製してみたが、膜の品質の制御が極めて困難であることが明らかになった。そこで今後は、平成23年度に見出し、高品質な膜を再現性良く作成することが可能な「両面被覆」方法を中心に研究を遂行する予定である。
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