研究概要 |
ウラシルはピリミジン塩基の一つであり、生物に偏在する核酸の構成要素である。またその誘導体は抗癌作用や抗HIV作用など様々な薬理活性作用を持ち、創薬研究において有用な化合物である。そのため入手容易な原料を用い、簡便にウラシル誘導体を合成する手法の開発は、重要な研究課題である。我々は既に、ニッケル触媒の存在下でアレンにイソシアナートを作用させると、アレン1分子とイソシアナート2分子とのエナンチオ選択的分子間[2+2+2]付加環化反応が進行し、エキソメチレン部位を持つジヒドロウラシル誘導体が得られることを見出している。 今回、ニッケル触媒の存在下で1,3-ジエンにイソシアナートを作用させたところ、アレンを用いた場合と同様に1,3-ジエン1分子とイソシアナート2分子との分子間[2+2+2]付加環化反応が進行し、ジヒドロウラシル誘導体が収率よく得られることを見出した。本反応は、1,3-ジエンとイソシアナートとの分子間[2+2+2]付加環化反応が進行した初めての例である。 Ni(cod)_2錯体と(R)-dtbm-Segphosから調製したニッケル触媒の存在下で,1-フェニル・1,3-ブタジエンと5当量の4-トリルイソシアナートをアセトニトリル溶液中100℃で16時間加熱撹拌したところ、ジヒドロウラシル誘導体が収率83%、43%の鏡像体過剰率で得られた。そこで鏡像体過剰率の向上を目指し反応条件の検討を行ったが、収率を維持したまま鏡像体過剰率を上げられなかった。そのため不斉化を見送り、1,3-ジエンとアリールイソシアナートとの分子間[2+2+2]付加環化反応における基質適応範囲を調べた。その結果,様々な置換基をもつ基質でも、付加環化反応が収率よく進行することがわかった。
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