研究概要 |
トリアゾールの環鎖互変異性によりわずかに生じるα-ジアゾイミンを起点とした遷移金属カルベン種の生成とそれを利用した触媒反応を,筆者らのグループとFokin(米国)らのグループが,最近,それぞれ独立して見出し,トリアゾールが反応基質として高い潜在性をもつことが示された。この研究の過程で,1位に4-トリアゾリル基が置換したアルコールを基質として用いると,α-イミノロジウムカルベン中間体を経由して,分子内で1,2-ヒドリド転位が進行し,エナミノン誘導体が得られることを見出した。さらに,1位に4-トリアゾリル基が置換した環状アルコールを用いると,1,2-アルキル転位による環拡大反応が進行した。例えば、銅触媒の存在下で,ブタ-3-イン-2-オールとトシルアジドから容易に合成可能な1-(1-トシル-1,2,3-トリアゾリール-4-イル)エタノールにRh2(OCOC7H15)4錯体を加え,マイクロ波照射下で140度に加熱すると,(Z)-4-(トシルアミノ)ブタ-3-エン-2-オンが収率94%で得られた。また本反応はワンポット反応に展開でき,末端アルキンから始めて,途中のトリアゾールを単離することなく,エナミノン誘導体へと変換できた。
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