研究課題/領域番号 |
23685022
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山本 拓矢 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30525986)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己組織化高分子 / 高分子トポロジー科学 |
研究概要 |
環状高分子は、対応する直鎖状高分子とは『かたち』の違いから物性が異なることが知られており、学術的関心から近年様々な研究が行われている。しかし、実際のところ、『かたち』の違いによる多少の物性差(例えば、流体力学的半径比はおよそ0.9)は現れるものの、この程度の僅かな物性差異を材料分野の応用として展開するのは難しいと考えられていた。 ところが一方、自然界に目をやると『環状』の高分子構造に基づく様々な機能が進化の過程で培われ、プラスミドDNAをはじめ、環状タンパク質、環状アミロースなどが、その『かたち』に基づく特異的な効果を発現することが知られている。これは、生体物質が単一分子で機能するのではなく組織を形成していることに由来する。申請者は、好熱菌と呼ばれる一部の単細胞性の古細菌がその細胞膜に環状の脂質分子を有することで海底火山や温泉など熱水環境で生息できることに着想を得、両親媒性の直鎖状ブロック共重合体を環状化し、直鎖・環それぞれの自己組織化体の特性を比較検討した。すると驚くべきことに、環状高分子ミセルは、直鎖のものと比べて構造崩壊温度(曇点)が飛躍的に上昇することを見出した。この特性を活かしてミセル触媒への応用を試みた。 ミセル触媒は四級アンモニウム塩などの低分子相間移動触媒に比べて親水相・疎水相の界面面積がはるかに大きいため効率が良く、しかも反応系に有機溶媒を必要としないグリーンケミストリーとして注目されている。しかし、水相中に溶解した反応試薬の濃度が高いとミセルが塩析するという問題が存在する。これに関し、環状高分子ミセルは高塩濃度中でも優れた安定性を示しており、反応時の加熱に対する耐性も相まって、ミセル触媒として高い機能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミセル触媒として、1-ブロモアセチルピレンをミセルに内包し、水溶液中の塩化物イオンと交換するFinkelstein反応を行った。その結果、環状高分子ミセルが直鎖状高分子ミセルに比べて高い活性を示すことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、直鎖状・環状高分子の混合比を調整することでミセルサイズやポリマーの分子量、化学組成を変えることなく広い範囲で崩壊温度の制御できるという特性を活かして、ゲスト分子の封入および温度変化による放出実験を行う。まず、ゲスト分子として蛍光物質であるペリレンから着手し、抗がん剤として知られるアドリアマイシンの封入およびコントロールドリリースも検討する。
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