研究課題/領域番号 |
23685025
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
後藤 淳 京都大学, 化学研究所, 准教授 (20335219)
|
キーワード | 高分子合成 / 触媒・化学プロセス / リビング重合 / 有機触媒 / 二元制御 |
研究概要 |
本研究では、二つの役割を担う有機触媒を開発し、それを用いた制御重合を企図した。 本年度は、第一に、分子量分布の制御に加えて、モノマー配列の可変を担う触媒として、ガリウム化合物を検討した。スチレンの重合において、分子量分布を制御するとともに、立体配列がフリーラジカル重合のそれよりもややアイソタクティックなポリマーが得られた。また、スチレンとメタクリル酸メチル(MMA)のランダム共重合において、分子量分布を制御するとともに、共重合配列(モノマー反応性比)がフリーラジカル重合のそれと異なるポリマーが得られた。そして、これらの系の機構を、反応速度論的に解析した。 第二に、分子量分布の制御に加えて、水酸基を重合中その場で開始基に変換する機能を担う触媒として、N-ヨウ化コハク酸イミドを検討した。水酸基から直接的に重合を開始して、重合を制御して進行させることのできる新しい手法である。本年度は、有機水酸基からの重合を検討し、一級から三級までの水酸基に適用された。さらに、水酸基を複数有する化合物を分岐点(開始点)として用い、分岐高分子の合成に応用された。分岐高分子の簡便性に優れた合成法となりうる。また、触媒として、ヨウ化ベンゼンジアセテート/ヨウ素分子の利用にも成功した。 第三に、熱とともに光で重合を誘起する触媒として、触媒の二量体を用いた。その熱および光解離を利用した熱重合と光重合を検討し、スチレンとMMAにおいて、重合の進行を確認した。さらに、新たな手法として、有機触媒錯体の熱および光解離を利用した熱重合と光重合を開発した。この方法は、市販の化合物を使用でき、また、化合物の種類によって、多様な励起波長での光重合を検討しうる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三つのテーマについて、概ね計画通りに、二つの役割を担う触媒がそれぞれ見いだされ、代表的なモノマーであるスチレンまたはMMAへの適用が検討された。光重合では新規の手法も創出され、その進展も期待され、研究はおおむね順調に進捗していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、触媒の種類を拡張して、適用可能なモノマー種を広げるとともに、制御可能な配列・水酸基基材・光励起波長の範囲を広げ、幅広い材料合成に供する素地を備えていきたい。
|