研究課題/領域番号 |
23685028
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
金原 正幸 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 助教 (40375415)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 導電性ナノ粒子 / フタロシアニン / プリンテッド・エレクトロニクス / 常温印刷 |
研究概要 |
我々はナノ粒子間のキャリア輸送改善がナノ粒子デバイス実現のための必須項目であると確信し、配位子層へ電気伝導性を付与すべく、大環状π共役系配位子のπ軌道を金表面に強固に固定化したπ接合金属および導電性酸化物ナノ粒子の合成を行ってきた。保護配位子としてフタロシアニン誘導体の合成と、これらに保護されたナノ粒子の調製を行った。得られた金属ナノ粒子のUV-visスペクトルから、フタロシアニン環のQ帯に帰属されるピーク強度がほとんど消失し、金軌道-フタロシアニンπ軌道間相互作用により、フタロシアニン環の電子状態が影響を受けていることが示唆された。以上述べたπ接合金属ナノ粒子は安定な溶液として利用可能であり、常温常圧での塗布乾燥のみによって金属光沢を有するナノ粒子薄膜を作製可能である。このフタロシアニン誘導体によって保護された金ナノ粒子を合成し、常温での塗布乾燥のみで8μΩcmの世界最高値の達成に成功した。また、金に加え、フタロシアニン誘導体によって保護された銀ナノ粒子の合成にも成功し、さらにこれらのナノ粒子の大量合成(固形分で日産200g)にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画ではπ接合導電性無機ナノ粒子を用いた、完全印刷型電子デバイスの創製を目指した。現在までに、常温印刷を用いて有機薄膜太陽電池および有機トランジスタの動作検証に成功した。有機薄膜太陽電池においては、我々の導電性金ナノ粒子を塗布電極として用い、P3HT/PCBMの組み合わせによるよく知られた系において、変換効率1.4%を達成した。この値は従来の変換効率4%程度に比較して低い値である一方、電極まで塗布プロセスで作製したデバイスとしては世界最高効率を示した。また、有機トランジスタにおいては透明プラスチック基板上に光パターニングを行い、全4層から構成されるトランジスタアレイを全く加熱を伴わない室温印刷プロセスを用いて、作製に成功した。移動度は0.5cm2/Vsであり、良好なトランジスタ特性を示した。このような室温プロセスは我々の常温導電性金属ナノ粒子を用いて初めて可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後2年間で常温導電性透明酸化物ナノ粒子の合成法を確立する。その後、常温導電性金属ナノ粒子、透明酸化物ナノ粒子およびグラフェン分散溶液を組み合わせ、完全にITO代替が可能な可視光透過率90%程度でシート抵抗10Ω/□の透明プラスチック導電フィルムを常温印刷によって作製する。インジウム枯渇の問題を抱えるITO代替を目指す。
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