研究課題/領域番号 |
23685029
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉川 浩史 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (60397453)
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キーワード | 多核金属錯体 / カーボンナノチューブ / 電池特性 / グラフェン / in situ計測 |
研究概要 |
次世代スピン/エレクトロニクスデバイスに応用可能な高機能材料の開発を考えると、分子一つ一つの磁気/電子機能を最大限に引き出せる物質系の創製が必要不可欠である。本研究では、そのような物質系の開発を目的に、高い電気伝導性や大きな比表面積などから注目を集めているナノカーボンと多彩な電気・磁気機能を有する多核金属錯体分子(分子クラスター)からなるナノ複合体の創製を行い、蓄電デバイス(二次電池)への応用を試みた。 今年度は、多核金属錯体分子であるポリオキソメタレート(POM)と単層カーボンナノチューブ(SWNT)からなるナノ複合体について、両者の重量比を様々に変化せたナノ複合体を計14種類作成することに成功するとともに、それらを正極とする電池の特性を検討した。その結果、ある比率の複合体において、約600h/kg以上という非常に高い放電容量を見出した。この値は複合化前のPOM電池の約2.5倍である。また、充電時間に関しても、従来のリチウムイオン電池と同程度の容量を得るのに8分程度と急速充電を実現することができた。さらに、SWNTから発展させて、二次元のナノカーボンであるグラフェンとのナノ複合化にも取り組み、SWNTの場合よりも大きな容量を見出すことに成功しつつある。このようにナノ複合化が、分子クラスターの蓄電機能を向上させるうえで重要な手段となることを示した。 本研究では、このナノ複合化による蓄電機能向上の原因を探るため、in situ XAFSやin situ NMR測定法を独自に開発して詳細を調べ、分子クラスターの数十電子にもおよぶ超還元とナノ複合化で誘起される電気二重層キャパシタの両方が要因であることを突き止めた。このような知見は、真の次世代二次電池を開発するうえで、非常に重要な概念となると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単層カーボンナノチューブとのナノ複合化により、予想を超える高容量、急速充電が実現できた点で計画以上に進展したと言える。また、カーボンナノチューブから発展させて、二次元のグラフェンともナノ複合化に成功したこととその複合体においてさらに大きな容量を得ることができたのは、非常に大きな成果である。なお、in situ計測により、高性能二次電池開発に向けての指針を得たのも計画以上に進展したと考える理由の一つである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度見出したグラフェンとのナノ複合体についてさらに詳細を調べ、より高性能な蓄電機能の開拓に取り組む。また、より高次のナノカーボンである3次元ナノポーラスカーボン(NPC)を開発し、NPCと分子クラスターのナノ複合化を検討する。なお、これらのナノ複合体について、蓄電機能だけではなく、触媒やその他の機能の開拓も目指す。最終的には、in situ測定法を駆使して、これらの機能の本質に迫り、新しい学理を探求することを目標とする。
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