研究課題/領域番号 |
23685031
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
湯浅 順平 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (00508054)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNA4重鎖 / 円偏光発光 / 超分子 / 蛍光プローブ / 光化学 / カルバゾール / 発光体 / DNA2重鎖 |
研究概要 |
本申請研究の目的は円偏光発光を利用することでDNA四重鎖の極めて速いタイムスケールで誘起される超分子構造変化をリアルタイム追跡することである。超分子構造の観点からヒトテロメア末端構造であるDNA四重鎖の持つ安定性の本質を分子レベルで明らかにし、ヒトテロメア末端構造の安定化を基盤とするテロメラーゼ阻害剤の開発に関わる有用な知見を得ることを目的に研究を行った。本年度は、研究計画に基づきDNA四重鎖を識別することの出来るプローブ分子の開発を行なった(後述)。DNA結合分子としてπ系の発光性分子であるカルバゾールに三重結合を介して2つのイミダゾリニームイオンを結合させた配位子(Im+)2Cz及びその他4種類の誘導体を合成した。このIm+2CzはDNAオリゴマーと静電的な相互作用によってDNAと複合体を形成する。Im+2CzはDNA四重鎖の場合は一段階で複合体を、DNA2重鎖の場合は段階的な複合体形成によって2種類の複合体を構築する。 このような複合体形成の様式からDNA四重鎖とDNA二重鎖とを区別して識別することができた。また DNA2重鎖と Im+2Czとの2種類の複合体はDNAaseなどのDNAを加水分解する酵素に対する活性や変性温度が異なることを明らかにした。このようにプローブ分子との段階的な複合体形成によって DNA二重鎖の酵素活性や熱安定性を制御することが出来た。(Chem. Eur. J. 2013 in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の目的は円偏光発光を利用することでDNA四重鎖の極めて速いタイムスケールで誘起される超分子構造変化をリアルタイム追跡することである。超分子構造の観点からヒトテロメア末端構造であるDNA四重鎖の持つ安定性の本質を分子レベルで明らかにし、ヒトテロメア末端構造の安定化を基盤とするテロメラーゼ阻害剤の開発に関わる有用な知見を得ることを目的に研究を行っている。具体的にはグアニン四量体に相互作用した超分子発光プローブ(レポート分子)の円偏光発光(CPL)を測定する。この円偏光発光は発光プローブがキラルな超分子構造であるグアニン四量体と相互作用することで誘起される。円偏光発光からは左右円偏光成分の発光強度差から与えられる物理量、g値を正確に求めることができる。g値は超分子発光プローブの光反応におけるキラリティー変化を明確に反映するため、DNA四重鎖の超分子構造変化に対して極めて敏感である。この発光プローブからレポートされるg値の経時変化を測定することでDNA四重鎖の超分子構造変化をリアルタイムに追跡する。そのため平成24年度までの研究では主に DNA四重鎖と相互作用するDNA結合プローブの開発に取り組んできた。π系の発光性分子であるカルバゾールに三重結合を介して2つのイミダゾリニームイオンを結合させた配位子(Im+)2Cz及びその他4種類の誘導体を合成した。このIm+2CzはDNAオリゴマーと静電的な相互作用によってDNAと複合体を形成する。Im+2CzはDNA四重鎖の場合は一段階で複合体を、DNA2重鎖の場合は段階的な複合体形成によって2種類の複合体を構築し、 NA四重鎖とDNA二重鎖とを区別して識別することができるプローブとして機能することを明らかにした。以上のことから、本研究は概ね計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方向としては、当初の計画に基づいて迅速に研究を推進する。具体的には発光を評価するための円偏光発光顕微鏡システムの改良を行なう。具体的には、円偏光発光顕微鏡システムに対応出来る特殊な温度制御システムを導入することで円偏光発光の温度依存性を測定する。これにより、Folding及びUnfold状態における円偏光発光の違いを測定し、DNA四重鎖の構造安定性と得られる円偏光発光との相関を明らかにする。また水溶液中におけるFolding及びUnfold状態の高速の構造変化を追跡するためにストップドフローラピッドスキャン分光測定装置 低温仕様RSP-2000-03LCYを購入し、DNA四重鎖の構造変化ダイナミクスについて検討を行う予定である。これら二種類の測定手法を組み合わせることで、従来では困難であった、光反応によって誘起されるDNA四重鎖構造の揺らぎと、熱反応による構造揺らぎとを系統的に比較検討する。
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