• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

細胞オルガネラ局在性を有する金属イオン蛍光プローブの開発と一細胞多重染色への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23685039
研究機関京都大学

研究代表者

多喜 正泰  京都大学, 地球環境学堂, 助教 (70378850)

キーワード亜鉛イオン / ミトコンドリア / ラベル化 / 蛍光イメージング / 蛍光プローブ / 局在性 / 細胞膜
研究概要

本年度は,細胞内の特定オルガネラにおける部位特異的な亜鉛イオンの挙動を検出するため,新規蛍光プローブの合成と機能評価を行うた。1つはミトコンドリアへの局在化を指向したローダミン型であり,もう1つは分子内にコレステロール基による細胞膜局在化を図ったフルオレセイン型の亜鉛蛍光プローブである。いずれの分子も同じ亜鉛イオン結合部位を有している。
(1)亜鉛蛍光プローブの物性評価
亜鉛イオンに対する蛍光応答特性について評価するために,オルガネラ局在性を取り除いた化合物を用いて検証した。いずれのプローブ分子骨格も高い水溶性を有しておりほぼ無蛍光であるが,亜鉛イオンの添加により100倍以上もの蛍光増大を示した。一方で亜鉛錯体の結合解離定数は異なり,フルオレセイン型の場合は30nM程であったのに対し,ローダミン型では300nM程度となり,蛍光団の種類により有効検出濃度が異なることがわかった。いずれも,蛍光応答は亜鉛イオンに対して特異的であり,他の金属イオンの共存実験から生理的条件下においても亜鉛イオンを高感度に検出できることを確認した。
(2)オルガネラ誘導基の機能検証
前述のプローブ分子自身は蛍光OFFの状態であるため,オルガネラへの局在化を確認するには,常時蛍光がONとなるモデル分子を用いた蛍光イメージング実験を行う必要がある。それぞれの蛍光プローブから亜鉛イオン結合部位を取り除いた蛍光分子を合成し、HeLa細胞の染色を行った。その結果,コレステロール基を有するフルオレセインは細胞膜から,ローダミン型の分子からはミトコンドリアからの発光がそれぞれ観測された。後者の分子はシステインチオールと共有結合可能なクロロアセトアミド基を有している。すなわち,ミトコンドリアに発現しているタンパク質のシステイン残基と共有結合することができ,4回の洗浄操作によっても細胞外に溶出することなく安定に存在していることがわかった。
(3)部位局在型亜鉛蛍光プローブ
それぞれの分子を用いて細胞系における亜鉛イオンの検出を行った。その結果,フルオレセイン型のプローブでは細胞膜近傍のローダミン型のプローブではミトコンドリア近傍の局所的な亜鉛イオン濃度変化を可視化できることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

プローブ分子を細胞膜あるいはミトコンドリアに局在化させるのみならず,ミトコンドリア内に発現しているタンパク質と共有結合を形成させることで,プローブ分子の安定な局在化を達成することができた。このような共有結合を介したプローブのラベル化は研究計画以上である。一方で,ゴルジ体,核,および小胞体にラベル化可能な蛍光プローブについてはやや遅れている。以上の成果を総合的に判断し,研究計画はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

細胞膜およびミトコンドリアを異なる蛍光団を持つプローブでそれぞれ染色することができたため,この2つを用いて同時に行う「多重染色」を行う。また,さらに異なるオルガネラ局在性を指向したプローブ分子の開発についても今年度に引き続き行う。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Human spire interacts with the barbed end of the actin filament2011

    • 著者名/発表者名
      T.Ito, A.Narita, T.Hirayama, M.Taki, S.Iyoshi, Y.Yamamoto, Y.Maeda, T.Oda
    • 雑誌名

      J.Mol.Biol.

      巻: 408 ページ: 18-25

    • DOI

      10.1016/j.jmb.2010.12.045

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Electron microscopic visualization of the filament binding mode of actin binding proteins2011

    • 著者名/発表者名
      T.Ito, T.Hirayama, M.Taki, S.Iyoshi, S.Dai, S.Takeda, C.K-Sakiyama, T.Oda, Y.Yamamoto, Y.Maeda, A.Narita
    • 雑誌名

      J.Mol.Biol.

      巻: 408 ページ: 26-39

    • DOI

      10.1016/j.jmb.201 1.01.054

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Design and Synthesis of Fluorescent Probe for Polyhistidine Tag Using Macrocyclic Nickel(II) Complex and Fluorescein Conjugate2011

    • 著者名/発表者名
      M.Taki, F.Asahi, T.Hirayama, Y.Yamamoto
    • 雑誌名

      Bull.Chem.Soc.Jpn.

      巻: 84 ページ: 386-394

    • DOI

      10.1246/bcsj.20100288

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of a Cholesterol-Conjugated Fluorescent Sensor for Site-Specific Detection of Zinc Ion at the Plasma Membrane2011

    • 著者名/発表者名
      S.Iyoshi, M.Taki, Y.Yamamoto
    • 雑誌名

      Org.Lett.

      巻: 13 ページ: 4558-4561

    • DOI

      10.1021/o1201746p

    • 査読あり
  • [学会発表] ロサミン型亜鉛蛍光プローブによるミトコンドリアタンパク質の共有結合的ラベル化2012

    • 著者名/発表者名
      押田至雅・多喜正泰・山本行男
    • 学会等名
      日本化学会第92春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(東京都)
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] 光励起電子移動機構を利用した時間分解型亜鉛蛍光センサーの開発2012

    • 著者名/発表者名
      赤岡一志・多喜正泰・山本行男
    • 学会等名
      日本化学会第92春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(東京都)
    • 年月日
      2012-03-26
  • [学会発表] 細胞膜透過性を有する時間分解型亜鉛蛍光センサーの開発2012

    • 著者名/発表者名
      赤岡一志・山崎碧・多喜正泰・山本行男
    • 学会等名
      日本化学会第92春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(東京都)
    • 年月日
      2012-03-26
  • [学会発表] 還元型フルオレセイン骨格を有する銅一価蛍光プローブの細胞内オルガネラ局在性の評価2012

    • 著者名/発表者名
      三井浩司・多喜正泰・山本行男
    • 学会等名
      日本化学会第92春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(東京都)
    • 年月日
      2012-03-25
  • [学会発表] 様々なチオエーテル配位子を有する銅一価錯体の構造と機能2011

    • 著者名/発表者名
      多喜正泰・伊吉祥平・山本行男
    • 学会等名
      第61回錯体化学討論会
    • 発表場所
      岡山理科大学
    • 年月日
      2011-09-17
  • [学会発表] 光誘起電子移動機構を利用した時間分解型亜鉛蛍光センサーの開発2011

    • 著者名/発表者名
      赤岡一志・伊吉祥平・多喜正泰・山本行男
    • 学会等名
      第61回錯体化学討論会
    • 発表場所
      岡山理科大学
    • 年月日
      2011-09-17
  • [備考]

    • URL

      http://www.users.iimc.kyoto-u.ac.jp/~z59219/publication.html

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi