研究課題
本研究は、平成21-22年度の科学研究費補助金(若手研究(B)、「超高感度時間分解赤外分光装置の開発と生体系プロトンポンプ機構の解明」)により援助を受けた研究を発展させるものである。超高感度時間分解赤外分光装置は、平成22年度に、回転セルとの組み合わせで完成させた。本研究の目的は、この装置をフロー型に発展させて、チトクロム酸化酵素のプロトンポンプ反応を追跡することである。特にカルボキシル基のCO伸縮振動の領域(1700-1800cm^<-1>)に着目し、プロトンの脱着に重要なAsp/Glu残基を明らかにする。本年度は、フローセルの開発を行った。フローセルの断面積は0.5mm×0.05mmとした。0.05mmは光路長に相当する。この光路長は従来の装置では扱えない長い光路長であるが、超高感度時間分解赤外分光装置を用いれば、0.05mmの光路長でもCOOHの信号を精度よく捉えられる。このことは、回転セルを用いた予備実験で確認した。フローセルは、0.05mm厚のテフロンスペーサー内に流路を作り、2枚のフッ化カルシウム窓板で挟んで作成した。またフローのためのシリンジポンプは自作し、1kHzの赤外パルス照射と同期して試料を流すことを可能にした。テストとして、このフローセルを用いてCO結合型チトクロム酸化酵素(0.5mM)のCO光解離後の時間分解赤外差スペクトルを測定し、Fe_<a3>からCU_BへのCOの移動の観測に成功した。感度は<70μODであり、COOHのプロトン化・脱プロトン化の観測に十分な感度を有していることが確認された。プロトンポンプを観測するためには、フロー試料にO_2を混合する必要がある。そのためのシステムを開発することが次の課題である。
3: やや遅れている
フローセルの開発には成功したが、O_2を混合するシステムがまだ開発中のため。
フロー試料にO_2を混合するシステムを開発し、O_2還元反応に伴うプロトンポンプを追跡する。02を混合する一つの方法は、シリコンのようにO_2透過性の高いチューブをフローの途中に設け、そのチューブの周りをO_2で満たすことである。この方法は、チトクロム酸化酵素の時間分解共鳴ラマン分光実験において過去に使用されている。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
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