研究課題
本研究の目標は、蛋白質中のアミノ酸残基の構造や水素結合ネットワークの変化を室温水溶液中(生理条件下)で観測できる高精度の時間分解赤外分光装置を開発し、それを巨大膜タンパク質(チトクロム酸化酵素や、その祖先型である一酸化窒素還元酵素)の反応観測に応用することである。光源に高輝度のフェムト秒赤外パルス光を使用し、検出器には分光器・マルチチャンネルMCT検出器を使用した。試料を回転セルに封入してチトクロム酸化酵素のCO光解離後の構造変化を観測した成果は、本年度、国際誌(J. Biol. Chem.)に報告した。次のステップとして、フローセルを用いて、チトクロム酸化酵素や一酸化窒素還元酵素の酵素反応の観測を試みている。これらの酵素反応を観測するために、本年度は、ケージド化合物(ケージドO2やケージドNO)の光分解によって反応をトリガーするフロー・フラッシュ計測系の開発を進めた。ケージド化合物の光分解を誘起する高安定ナノ秒窒素パルスレーザーを導入し、一方、効率的な試料交換が可能な光路長20マイクロメートルのマイクロ流路フローセルを製作した。フロー・フラッシュ計測系を自作の時間分解可視吸収測定装置に組み込み、市販のケージドNOを用いて、一酸化窒素還元酵素の反応を実時間観測することにすでに成功している。フローフラッシュ計測系を時間分解赤外分光装置に組み込んで、酵素反応を赤外分光観測する準備が整った段階にある。チトクロム酸化酵素の酵素反応観測に必要なケージドO2は、既報の化合物をベースに現在開発・改良中である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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