研究課題
本研究ではこれまでに、液晶-基板界面における不連続アンカリング転移を含フッ素ポリマー表面と光応答性デンドリマー吸着界面の2つの系により確認してきた。特に、レーザー光による刺激、または光誘起発熱によりアンカリング転移を引き起こし、バルク中の液晶分子の配向を変化させることで動作する表示・メモリデバイスの基礎動作を幾つか実現した。この中では、上記2つの材料を協同的に利用することで、マイクロワットオーダーの微弱な刺激光での動作も確認している。また、光応答性デンドリマーを添加した液晶を用いた液晶ドロップレット(液滴)の系において、光を照射することによる表面の配向転移と、それによるバルクの配向変化を観測した。平成26年度は、以上のような応用物性よりも基礎物性に重点を置いて研究を行った。まず、含フッ素ポリマー表面を導入した液晶セルにおいて、超高感度示差走査熱量測定(DSC)によりアンカリング転移を捉えることに成功した。これは、アンカリング転移の前後において界面近傍の自由エネルギー変化が熱的変化を伴うことを示しているだけでなく、我々の知る限り表界面の現象を熱測定により捉えた初めての例である。また、温度は熱分析法を用いてアンカリング転移前後の熱拡散異方性の変化を捉えることにも成功した。これらの成果は論文にまとめ、国際誌にて発表されている。光応答性デンドリマーについては、界面に敏感な第二次高調波発生と全反射赤外吸収分光スペクトルの測定を行い、界面に吸着したデンドリマー分子の紫外光により誘起されるコンホメーション変化と、それによりもたらされる液晶のオーダーパラメーターの変化を捉えることに成功した。これらについては、論文を執筆中である。また、表面の変化に伴う液晶の配向変化を解析的に明らかにするため、アンカリングエネルギーの測定および理論計算を引き続き行っている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件)
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