研究課題/領域番号 |
23685047
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 優実 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (00436619)
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キーワード | セラミックス / イオン結晶 / 誘電体物性 / 表面・界面物性 / 新エネルギー |
研究概要 |
最近、日常生活において発生する「環境振動」をエネルギー源として利用しようとする動きが活発化しおり、中でも、エレクトレットと呼ばれる安定静電気保持材料を発電素子として利用する静電式振動発電システムが注目されている。ただし、現在開発が進められているポリマー製のエレクトレットは、材料特性上、付与可能な表面電荷の限界量が1μCcm^2とされており、このことが静電式振動発電機の飛躍的な出力向上に対する妨げとなっている。そこで本課題では、既存のポリマーエレクトレット式装置より1桁以上高い出力を実現すべく、高密度な表面電荷を半永久的に保持し得る新たな「イオン伝導性セラミックエレクトレット」の開発を目指すこととした。 イオン伝導牲セラミックスをエレクトレット化する際のコヒセプトは、直流電界下でのイオン分極の誘起とその凍結である。したがって、この手法を用いて高密度かつ長寿命な表面電荷を作り出すためには、できるだけ多くのイオンを長距離にわたって移動させるとともに、移動したイオンをできるだけ「深い準位」にトラップする必要がある。そこで数種の基材候補に対して導電/誘電特性評価を行い、この条件を満たし得るセラミックスとして、プロトン伝導を有するオキシハイドロキシアパタイト(Ca_<10>[PO_4]_6[O,OH]_2、導電率:400~800℃で10^<-9>~10^<-5>Scnm^<-1>、活性化エネルギー:1.3eV)を選定、熱エレクトレット法によりイオン伝導に基づくチャージセパレーションを利用した表面電荷形成を試みた。結果、50μCcm^<-2>超の表面電荷を有し、2500V超の表面電位を実測ベーズで少なくとも2週間以上安定に維持し続けるセラミックエレクトレットの作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の目標は、静電式振動発電に用いることの可能な新規セラミックエレクトレットの開発であり、現時点までに、オキシバイドロキシアパタイトを基板とすることで2500V超の表面電位を安定に発生するセラミックエレクトレットの作製に成功している。また、帯電/非帯電パターニングについても、スパッタリング法の利用により実施可能であることを見出していることから、おおむね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度からの継続課題:イオン伝導性セラミックスエレクトレットの表面電荷発生メカニズムの解明 前年度、数種のイオン伝導体を用いてセラミックエレクトレットの作製を行ったが、いずれの場合にも、熱誘起脱分極電流(TSDC)測定結果より得られる「表面蓄積電荷量」とケルビンプローブ式非接触電位測定により得られる「表面電位」の間に電磁気学で支持される関係が成立していなかった。今後、表面電荷に関するより定量的な評価によって、加熱・直流電界下における表面電荷形成メカニズムと表面電位の発生メカニズムの解明につなげてゆく必要があるる。 本年度着手課題:単純化振動発電機による発電特性評価、エレクトレット開発へのフィードバック パターニングなどの微細加工要素をなるべく含まない極めて単純化した素子配置をもつ振動発電評価系を構築し、エレクトレット本来の特性による出力性能の比較を行う。比較対象のエレクトレットには、コロナ放電またはイオン注入フッ素系ポリマーを利用する予定である。結果は順次、エレクトレット開発ステージにフィードバックする。
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