研究課題/領域番号 |
23685049
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大野 工司 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00335217)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 高分子構造・物性 / 生体材料 / ナノ材料 / 表面・界面物性 |
研究概要 |
表面開始リビングラジカル重合(LRP)により、分散性に優れた、ポリ(ポリエチレングリコールメタクリレート)を付与したシリカ微粒子(PPEGMA/SiP)を合成した。この際、SiPコアの粒径およびブラシ鎖長を変え、構造因子の異なる一連の複合微粒子を調製した。高圧力下(200MPa)で表面開始LPRを行い、重量平均分子量Mwが100万に及ぶ高分子量ポリマーの合成にも成功した。23年度に得られた複合微粒子の体内動態挙動を評価した。その際、グラフト鎖の分子量が大きくなると、複合微粒子の流体力学的サイズが大きくなるためだけではなく、表面の有効グラフト密度が小さくなり、タンパクが吸着しやすくなると考えられ、血中滞留性が悪くなると推測した。しかし、結果はそれに反した。24年度はその解明に注力した。タンパク質(BSA)吸着のグラフト密度依存性、グラフト鎖長依存性を評価したところ、グラフト密度および鎖長が極端に小さくない限り、タンパク質吸着に大きな差は見られなかった。これは、もともとタンパク質吸着性が低いPPEGMAでは、グラフト量がある程度十分であれば、タンパク質の吸着を抑制できることを意味する。また、複合微粒子に対するマクロファージの貪食特性を評価した。予備検討として、直径100nmと600nmのシリカ粒子に分子量約10万のPPEGMAをグラフとした2種類の複合粒子に対する貪食特性をフローサイトメトリー法で評価した、大きな複合微粒子の方がよく貪食された。このことから、血中滞留性はタンパク質吸着性よりも、細胞との相互作用に大きく影響されるのではないかと推察される。 また、複合微粒子の弾性率を制御するために、親水性ポリマーブラシを付与した中空微粒子の合成を行った。ブラシ層を蛍光標識することにより、共焦点レーザースキャン顕微鏡で中空構造を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合微粒子の血中滞留性が、タンパク質吸着よりもマクロファージとの相互作用に大きく影響されるのではないかという推察ができたことは、今後研究を推進する上で非常に意義深いことである。構造パラメータを変え、マクロファージの貪食特性をさらに詳細に調べることにより、さらに体系化できるのではないかと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
放射性同位体(125I)標識した複合微粒子を、担癌マウスに尾静脈から投与し、経時的に採血し、ガンマカウンタにより放射線強度を測定することにより、微粒子の血中残存率を評価する。また、一定時間経過後に各種臓器を摘出し放射線強度を測定することにより、微粒子の体内分布を評価する。特に、癌組織の放射線強度からEPR効果による集積率を評価する。同種の実験を各種がん細胞により行い、細胞依存性についても併せて評価する。また、抗体を担持した複合微粒子を作成し、がん組織へのアクティブターゲッティングに関する検討を行う。 中空微粒子の体内動態では、第一に、形態変形の効果を明らかにする。そのために、コア粒子の粒径、グラフト鎖長、ポリマーブラシ層の架橋度などを変え、構造パラメータの異なる 一連のサンプルを調製する。ポリマーブラシ層の構造を最適化することにより、優れた血中滞留性を示す、ミクロンサイズの中空微粒子の創出に挑戦する。
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