本年度は大規模製造に適した高分子メソ多孔体の作製法の改良を実施した。具体的には、製造設備の大型化に対応するための撹拌装置および粉砕・成形装置を導入し、操作法の標準化を実施した。また、原材料の再検討を行ない、ポリスチレンやポリスルホンなど工業的に大量に販売されている汎用高分子を入手した。製造過程で使用する溶媒も、一般に工業利用されているものへと変更し、作製条件の最適化を実施した。加工プロセスで使用する溶媒の再利用にも取り組んだ。このような多方面からの検討・改良の結果、大容量製造に適した製造プロセスを再現性良く確立することができた。また、紡糸法や塗布法といった既存の高分子加工技術との組み合わせにより、ファイバーやシート、ペレットなどの様々な形状の高分子メソ多孔体を製造できることを実証した。 オイル成分が混入した高濃度汚染水(石油随伴水)は資源エネルギー・環境保全に関連した注目トピックの一つである。本年度は、高分子メソ多孔体のオイル吸着材としての応用可能性を検討した。具体的には、水中に溶解したオイル分子に対する分離性能評価を行なった。また、市販の活性炭、合成高分子吸着剤、高分子粉体に対しても吸着等温線を測定し、高分子メソ多孔体との性能比較を行なった。その結果、高濃度領域における吸脱着サイクルでの分離性能において、優位性を得る可能性を見出した。耐熱温度の高いエンジニアリングプラスチックから作製した高分子メソ多孔体では、水中のm-クレゾール(随伴水に含まれる主要な有機分子の一つ)の吸着実験で、市販の活性炭や高分子吸着材と比較して、著しく大きな「吸着量の温度依存性」が確認された。すなわち、開発されたオイル吸着材は、吸着容量の大きな温度依存性を有するため、穏和な運転条件での油/水分離プロセスの設計を可能にし、経済的に応用可能な随伴水処理システムを構築するためのコア技術として有望である。
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