今年度は,まず,緑色や長波長領域で高効率発光が期待される半極性{20-21}GaN基板上緑色発光InGaN量子井戸(QW)の基礎光物性を近接場顕微発光測定よって評価した. この試料において,発光強度分布の最大値と最小値の比が4,また,発光ピーク波長分布が5nmであった.これらの値は,従来報告されている(0001)QWに比べ数分の1程度の小さな値であり,{20-21}QWの面内発光特性が非常に均一であることを示している.さらに,マルチモード近接場発光測定からキャリアの面内拡散長を見積もったところ,{20-21}面内の[10-14]方向に70nm,直交する[-12-10]方向に50nm程度であった.これらの値は,(0001)QWにおける拡散長の数百nmに比べて非常に短い.これは,内部電界の強度の大小関係に従って,{20-21}QWの発光寿命が(0001)QWよりも短いことを直接的に反映している.また,{20-21}QWの表面には,数nmの凹凸構造が観察された.稜線が[-12-10]に沿った特徴的な形状をしており,結晶学的な異方性に起因したものと考えられる.また,表面モフォロジに関連して発光波長分布も見られ,表面に現れる結晶面によりInの取り込まれ量が異なるためと考えている. 次に,共焦点顕微発光マッピング測定と過渡レンズ測定を同一領域で行い,(0001)サファイア基板上青色および緑色発光InGaN QWにおける効率ドループへのオージェ再結合の関与を調べた. これらの試料において,励起光強度の増加によって発光強度が飽和傾向になる領域は,過渡レンズ測定によって観測されるキャリア密度も飽和傾向を示していた.また,キャリアの飽和傾向がより顕著に観測された.この結果は,効率ドループへのオージェ再結合の関与を否定しており,発光領域から非発光領域へのキャリアの流出が主要因であることを示唆している.
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