研究課題
本研究の目的は研究代表者のグループが長年培ってきたナノスケール電気伝導測定技術を拡張し、スピン偏極走査トンネル顕微鏡を新たに建設して微小領域の電位分布測定が可能なポテンショメトリ測定を行い、表面ラシュバ系の電場誘起のスピン依存伝導現象を検出することである。初年度は次の3つのことを行った。1.装置作成-超高真空(10^-11 torr)、極低温(2K)という極限環境を達成し、グラファイト試料を用いて走査トンネル顕微鏡で原子分解能観察が可能であることを実証した。さらに超高真空化でシリコン表面を清浄化して電子回折パターンを確認した。2.スピン偏極探針の開発-磁性体であるコバルト鉄(CoFe)被覆のカーボンナノチューブ(CNT)探針を作成し、特性評価を行った。非磁性体を用いた場合と明らかに実験結果に差が出たので磁化が保持されていることが実証できた一方で歩留りが悪く、別な探針を使用する方針に切り替えて研究を進めている3.新奇表面ラシュバ・トポロジカル系の開拓-ビスマス(Bi)を1原子層から超薄膜として成長させることが可能であることを発見し、高分解能角度分解光電子分光によってそのバンド分散を測定した。その結果基板とBiの相互作用で非常に興味深い電子状態を有していることが明らかになった。上記成果により論文を6本出版し、6件の招待講演を行った。
2: おおむね順調に進展している
装置開発に関しては研究計画書通りに進んでおり、本年度から本格的な測定が開始される。探針開発に関しては今後別なものを探索していくがこれまでのノウハウを生かせるので滞りなく推進される。また新奇な測定系探索も順調にいっている。
今後は開発した新装置を用いて本格的な測定を行っていくが、走査トンネル顕微鏡観察・分光測定に習熟するために研究計画にはなかったが、表面超伝導や電荷密度波に関する測定を行う予定である。これが完了した後、本来の目的であるスピン偏極走査トンネルポテンショメトリ測定に移る。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件)
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