研究課題/領域番号 |
23686010
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片山 竜二 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40343115)
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キーワード | GaN / 周期的極性反転 / 第二高調波発生 / 分子線エピタキシー |
研究概要 |
本年度は、周期的極性反転GaN導波路および、TiO_x/GaN導波路を作製し、それらの導波モード実効屈折率分散測定など線形光学特性の評価により、導波路として機能することを確認するとともに、特に前者では高効率な第二高調波発生を確認した。以下前者について述べる。結晶成長には分子線エピタキシー装置を用い、まずサファイア(0001)基板表面を低温窒化処理し、厚さ20nmのGaNを成長し、-c極性のGaNテンプレートを作製した。続いて、電子線リソグラフィーを用い、部分的にサファイア基板が露出するよう、周期2.0μmのラインアンドスペース状に加工した。このテンプレートを再度成長室に導入し、+c極性GaNを実現する成長条件にて1.3μm再成長した。その際まず高温窒化処理し、厚さ20nmのAlNバッファ層を700℃にて成長したうえでGaNを再成長した。つまり、基板の露出した部分に成長する領域は+c極性、一方で-c極性GaN上では下地の極性を引き継ぎ-c極性になることを狙った。この導波路について、第二高調波発生の実証実験を行った。基本波光源としてTi:sapphireレーザーを用い、TM_0モードを励起した。発生光はフィルタにて基本波を除去した後に分散型分光器に導き、光電子増倍管により検出した。この測定を、ゴニオメータにて入射極角θ及び出射極角Ψを変化させ繰り返し、基本波と第二高調波のグレーティング結合条件を独立に変化させ、QPM条件を求めた。θ=55°・Ψ=12°において波長425nmの発生光強度が最大となり、目視観察可能な第二高調波発生を実証した。これは非共鳴条件に比べ約1000倍の増強にあたり、この角度は線形光学測定により求めた共鳴条件と良く一致した。励起された二波の導波モードの波数差が極性反転の波数2π/Λ_<QPM>と一致し、1次のQPM条件を実現していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はまずワイドギャップ半導体、特に窒化物半導体からの量子光学的効果の実証を行うことが最重要な課題であったが、周期的極性反転GaN導波路から高効率第二高調波発生の実証に成功したため。なおこの実証実験で得られた波長425nmの紫色光は、半導体の疑似位相整合構造を用いたなかでは最短波長の第二高調波発生であり、ワイドギャップ半導体の量子光学応用のアドバンテージを明確に示す初めての結果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
震災の影響により酸化物薄膜の成膜設備の導入が遅れたことから、今後この装置の立ち上げとTiOx/GaN線形・非線型導波路やZnO/GaN極性反転導波路構造の作製を急ぐ。一方、第二高調波発生に成功した周期的極性反転導波路構造については、これと逆の非線形光学過程である光パラメトリック下方変換について、実証実験を進める。
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