研究課題
本年度は、前年度に第二高調波発生を実証した周期的極性反転GaN導波路による縦QPM構造に代えて、作製の比較的容易なTiOx/GaN導波路による横QPMによる波長変換を実現するべく、スラブ導波路素子の作製技術を開発した。まず下部導波層として用いる非線形光学活性材料として、サファイア基板上GaNを有機金属気相成長(MOVPE)法を用いて成膜した。本研究で目指すスラブ導波路の下部導波層の厚さは200 nm程度と薄い一方で、MOVPE法において通常広く用いられるGa極性膜では初期に島状成長が発生し、これらが会合する500 nm以上の膜厚でなければ光学的に平坦な膜が出来ないことが知られていることから、これに代えてN極性膜による薄膜の平坦化を試みた。微傾斜角0.8°のc面サファイア基板を用い、成長直前に基板表面を窒化後、550°CでGaN緩衝層を堆積したうえで1070°Cに昇温し成膜した。走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡による観察から、N極性膜の成長においては初期から二次元成長モードが実現され、膜厚100 nm以下でも十分に平坦な膜ができることが分かった。続いて上部導波層として用いる、反転対称性を有する非線形光学不活性な材料として、TiOxの成膜条件を探索した。まず平行平板型反応性RFスパッタリング装置を用いて、ガラス基板上に2インチ金属Tiターゲットを用い、RF出力は200 W、成膜時間は180分、Ar流量を10 sccmと一定とし、一方O2流量を0.5~5.0sccmと変化させて成膜した。スパッタリング圧力1.75、2.0、2.5 Paの特定のO2流量の条件において、表面粗さ2.0 nmの平坦膜が得られることが分かった。また反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いることで、膜厚の均一性が顕著に向上することも確認された。
3: やや遅れている
初年度はまず周期的極性反転GaN縦QPM導波路から高効率第二高調波発生の実証に成功し(実証実験で得られた波長425 nmの紫色光は、半導体の疑似位相整合構造を用いた中では最短波長の第二高調波発生)、ワイドギャップ半導体の量子光学応用のアドバンテージを明確に示すことができたが、昨年度は横QPMという新規素子構造の提案のために必要な、膜質・発光効率等の改善・条件出しに注力をしたため。
初年度は震災の影響により酸化物薄膜の成膜設備の導入が遅れたが、24年度にこの運転の目処がついた。TiOx/GaN線形・非線型導波路を今後進め、一方でZnO/GaN極性反転導波路に代えてGaN/GaNの極性反転構造の作製に切り替える。これと並行して、共鳴ハイパーパラメトリック散乱の実現のために、InGaN/GaN量子井戸構造の高品質化を進める。一方、第二高調波発生に成功した周期的極性反転導波路構造については、これと逆の非線形光学過程である光パラメトリック下方変換について、実証実験を進める。
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