強誘電特性は材料寸法に非常に敏感であることが知られており、特にナノスケールの構造体では自由表面が形成する反電場(強誘電性を減衰させる電場)や異材界面からの拘束が支配的となるため、強誘電特性が非常に存在し難い環境となっている。しかし、申請者はナノ薄膜においてマクロ材とは異なる原子配列が現れ、新奇な強誘電分極が保持されることを発見した。本研究では、ナノ構造体中に発現する新奇強誘電特性とその発現メカニズムを解明することを目的とする。 最終年度である平成25年度は、前年度に開発した静電場解析を用いて、ナノ構造体中の反電場の空間分布を3次元的に解析した。渦状の新奇強誘電特性が現れる、表面・ドメイン壁会合部や構造体角部、頂点部において比較的大きな表面分極電荷が現れ、これが渦状分極構造を形成する要因となっていることを明らかにした。また、同部は外部からの負荷に対する原子構造変化(ひずみ)が比較的集中する箇所であり、このひずみ集中と連動して渦状分極が変化することを明らかにした。さらに、将来的な発展性を目指して、強誘電性と相互作用の強い磁性とのカップリングについて検討を行った。その結果、強誘電分極の方向が変化すると、磁性体の磁気秩序も連動して変化することを明らかにした。すなわち、非線形な磁気電気相互作用(Magnetoelectric Coupling)が現れることを示した。得られた成果は、Nano Letters等の速報性の高い国際誌に掲載されたほか、一連の成果・知見をまとめたものはMechanical Engineering ReviewsやActa Mechanicaにレビューとして掲載された。
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