ワイドバンドギャップ半導体であるシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN),ダイヤモンドは,省エネルギー化を実現できる次世代半導体デバイス用材料として注目されている.しかしながら,これらの材料は,高硬度かつ熱的・化学的に極めて安定であるため,その加工が困難であり,加工能率(コスト)・加工精度の両面において技術的課題となっている.この課題を解決するために,本研究では,常温・常圧の溶液環境下における化学反応を効果的に利用した,安全で低コストな新しい加工方法を適用することによって,SiC基板やGaN基板の高能率・高精度加工を実現することを目的としている.平成25年度は,以下のことを明らかにした. (1)磁性工具を用いた局所研磨法によるSiCウエハの全面平滑化 溶媒中で鉄微粒子を吸着させた磁性工具をSiCウエハ上で接触・走査させることによって,SiCウエハ全面の平坦化・平滑化を試みた.その結果,ウエハ全面において表面粗さの指標であるRMS値で0.2 nm(測定領域72 μm×54 μm)を下回る表面粗さに仕上げることに成功した. (2)紫外光援用ウエットエッチングによる表面平坦化 溶媒中において紫外光を援用したウエットエッチングによる加工法を適用し,SiC基板だけでなくGaN基板の平坦化の可能性についても実験的に検討した.その結果,加工前のGaN基板の表面粗さがP-V: 14.4 nm,Rms: 2.58 nm,Ra: 2.04 nmである基板に対して,紫外光を照射しながら加工することによって,表面粗さをP-V: 1.06 nm,Rms: 0.18 nm,Ra: 0.14 nmにまで低減することに成功した.また,紫外光導入の効果についても実験的に確認できた.
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