研究課題/領域番号 |
23686030
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 伸太郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50372628)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 流体工学 / 数値流体力学 / 流体構造連成 / 熱物質輸送 |
研究概要 |
工業分野や生体内でみられる異媒質界面を有する流れ場では、異媒質面の変形および熱の授受は系全体の流動に本質的な役割を果たすが、それらを含めた三相熱流動の解析手法は未確立である。本研究課題では、固体の内部応力・温度分布、混相界面現象を統合した三相流の直接解析手法を開発し、界面現象から(分散相) 群挙動までの流れのマルチスケール性について研究する。また生体を模擬した柔軟な壁を持つ管路における熱流体問題へ適用し、構造物の接触や組織表面の濡れ性など含め、力学を総合した生体問題解析へ発展させる。 平成24年度は、流体中における複数の粒子の相互作用問題において潤滑を考慮した問題を取扱った。いくつかの検証問題を通して提案したアルゴリズムの精度確認を行った。その後細胞を模擬した膜構造物や中実粒子が接近して流れる問題において効率の良い計算手法であること、特に流体を介してトポロジーの異なる物体どうしが相互作用する問題において計算効率の優位性を有することを確認した。 また、熱流束を考慮した流体構造物相互作用問題において物体内外を通る熱流束に着目した解析法を提案し特徴的な挙動について研究をおこなった。とくに分散性二相流(固液混相流)中において分散相の集団的挙動について解析を進め、固体と流体の熱伝導率の比および粒子添加量が粒子振動運動あるいは振動と対流モードの遷移に与える影響について考察を行った。これらの運動において個々の粒子にとっては、粒子内部を通る熱流束が存在するだけであるが、粒子を取り巻く流体との熱輸送の時間差によって周囲の粒子と集団的な挙動をしうる可能性を示唆する結果を得ている。さらにこの問題については、高精度な界面追跡手法とカップリングした数値解析手法を提案し(曲面上の応力を考慮した)膜構造物の内外における熱物質輸送問題の検証を行ったところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、平成23年度中に開発する要素技術として変形固体を含む混相流、温度場を考慮した混相流、弾性物体の流体潤滑、固体界面の濡れ性を挙げ、平成24年度以降にそれらの応用として分散性混相流のマルチスケール解析および生体力学への応用を行う予定であった。 要素技術については概ね予定どおり進められたが、流体潤滑の問題において困難な問題があり予定よりやや遅れて平成24年度中期に必要なものを準備することができた。 応用に挙げた2つの対象のうち、分散性混相流のマルチスケール性を考慮した集団現象については概ね予定どおり解析フェイズへ進んだ。また生体力学への応用は、膜構造物と熱流体の連成解法により一部は予定通り進めているが、上述の流体潤滑を考慮することで本質的な課題への適用可能性を探る段階に入った。
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今後の研究の推進方策 |
温度場をカップリングした分散粒子混相流において、粒子内部温度勾配が粒子群挙動に与える影響について広いパラメーター範囲で大規模数値解析を実施し粒子流れの安定性を探る。また粒子と同程度のスケールと流れ場全体スケールとの間のエネルギーのやりとりに着目して、混相流中の粒子集団挙動用の解析を行う。特に粒子接触による熱伝導が分散性混相流中の分散相集団現象に及ぼす影響を考察する。 またこれまで開発してきた要素技術や混相流解析手法をもちい生体力学への応用をすすめる。生体細胞・組織を模擬した弾性構造物と流体の相互作用問題において熱および物質の輸送問題を取り扱い、特に多数の血球が集う状況における輸送の問題について解析を行う予定である。
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