固気液媒質が分散的に存在して流れる分散性混相流は化学工業分野の流れや雲の形成また生体内流れなど自然・工業から生命科学にまでわたって見られる。相界面の変形およびそこでの熱の授受は系全体の熱・物質輸送に本質的な役割を果たすが、それらの解析方法は未確立である。本研究課題で提案した界面熱流束分解によって固体内部の温度分布を考慮した混相流中の熱輸送解析を実施し、個々の分散相近傍の流れから分散相の群挙動までの流れのマルチスケール性について研究を行った。 H26年度は、粒子接触時の接触熱伝達モデルを構築した。すなわち、温度差のある二つの粒子の接触熱抵抗を特殊関数によって構成した。このモデルは上記の界面熱流束分解と整合するように一般化され、混相界面熱流束モデルとして整備した。こうして得た熱輸送モデルは,流体および粒子内温度分布の時間発展解法とも相性がよく、また半径の異なる粒子どうしおよび粒子と壁面などの衝突熱輸送にも用いることができる。 大規模問題への実装として開発手法を粒子乱流における熱輸送解析を実施した。閉じた容器に一定温度差を与えた系において粒子混相流の熱輸送の影響を解析したところ、粒子と流体の熱伝導率比を適切に選んだ場合において、平均温度勾配とは逆の温度勾配をもつ流れ構造が顕れることを見出した。その分布は有限サイズ粒子の内部温度分布および熱容量によって説明され、運動量拡散と温度拡散のスケールの違いに起因する特徴的な輸送現象であるといえる。
|