研究課題/領域番号 |
23686031
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
越山 顕一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80467513)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 分子動力学 / 非定常 / 非平衡 / リポソーム / ソノポレーション |
研究概要 |
本研究は,(i) 超音波による圧力変動および微小な流れと細胞膜との干渉の非平衡・非定常分子シミュレーション,(ii)チャンネルタンパク質,イオンを含む細胞膜分子モデル,(iii) 超音波刺激に応答する神経回路網モデル,を開発し組み合わせることで,超音波下の①分子レベルの膜構造変化,②イオンの膜透過,③電位差変化の伝搬を調べ,さらに,(iv) in vitroの超音波ニューロモジュレーション実験を行ってそれらを検証することで,理論と実験の両面から超音波ニューロモジュレーションの分子的機構を解明することを目的とした研究である.本年度は,超音波作用下における,イオンに対する細胞膜透過性変化を自由エネルギ理論に基づいて調べるため,超音波によって細胞膜に生じると期待される孔構造の有無による,脂質膜中およびその近傍のカリウムイオンの平均力ポテンシャル(PMF)プロファイルをバイアスサンプリングMDシミュレーションと統計学に基づいた自由エネルギ計算手法の一つであるWHAM法によって計算した.これにより孔構造がない場合,膜中央部でのPMFの値が約130 kJ/molであったのに対して,孔構造がある場合は,孔構造内と水分子層とでPMF値の差がほとんどないことがわかった.さらに,昨年度構築した膜を隔ててイオン濃度が異なる二段脂質膜モデルを改良し,孔構造を有する二段脂質膜モデルを構築し,この系に対して初年度に構築した超音波照射下での膜構造の周期的な変化を表現するコードを適用して計算を行った.これよりイオンの孔構造通過パターンへの周期的な膜構造変化の影響を解明し,その成果の一部を,日本機械学会2012年度年次大会において発表した.上記の結果より,超音波照射によるイオンの膜透過が予測されたため,この現象を実験的に検証するためのイオンの膜透過測定装置を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に使用している計算機が高速化し,また計算コードのアルゴリズムやパラメータ推定のための新しい理論が発表されるなどしたことで,パラメトリックな計算を同時並行でかつ効率的に行うことができるようになってきていることがあげられる.
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今後の研究の推進方策 |
超音波によるイオンの膜透過計測に関しては研究対象が新しく未知の点が多いため,本分野の専門家である,大阪大学基礎工学研究科,馬越教授や荻准教授などに研究ミーティングを依頼してアドバイスをいただきつつ,研究を推進していく予定である.
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