研究課題/領域番号 |
23686032
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土井 謙太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20378798)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 流体工学 / 分子流体力学 / 量子分子動力学法 / マイクロ・ナノデバイス / 計算物理 |
研究概要 |
平成24年度は,電解質溶液中にマイクロポアを有したイオン交換膜を配置し,そこにマイクロメートルサイズの微粒子を添加してイオン流動の可視化を行った.微粒子の運動が印加電場の向きに従って移動するイオンの向きに一致していることが確かめられ,局所的に電気的中性条件の破れた場におけるイオン流動の可視化に成功した.一方,イオン流動によるイオン交換膜の変形は見られず,力学的な振動を捉えることはできていない.今後は,イオンの運動方程式をもとにイオン流動と微粒子の相互作用を考慮した理論モデルを構築することにより,流動場の定量的評価に取り組む. もう一つの課題として,電荷移動を考慮した分子動力学手法の開発について,本年度は微小電極間のナノギャップに単分子が置かれた場合の電流電圧特性の解析を行うことにより,電荷が移動するときの分子やそのポテンシャル場の影響について考察を行った.その結果,電極から放出される電荷が分子の静電ポテンシャルに散乱されながら定常状態に至る過程でコンダクタンスの値が決まり,DNA塩基分子について行われた実験結果と定性的に一致することが示された.今後さらに,量子力学・量子化学解析に基づく定量的評価に取り組む. さらに,電解質溶液中のイオン流動について,Nernst-Planck方程式,Poisson方程式および分子動力学解析を融合した解析手法を提案した.これにより,溶液中に外部電場が印加された場合の分子動力学解析が可能となった. 以上の結果について,原著論文として出版または投稿中であり,国内外の学術会議においても成果発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記したように,ここで得られた研究成果について,国内外の学術会議において成果発表を行い,随時原著論文としても投稿・出版できていることから順調に進展しているといえる. 一部の実験計画については,当初の計画通りに進んでいない部分もあるが,現象の本質を解明するための致命的な欠陥ではないため,その対応策により当初の目的を達成する見込みがついている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は実験系の構築と装置の選定に時間を要したため,実験データの取得が十分とはいえない.そのため,平成25年度は本実験のデータ取得を重点的に行う.一方で,理論モデルの構築は順調に進んでおり,実験データを得ることができ次第定量的評価を行えるよう,理論と実験を並行して研究を進める.イオン流動の可視化に関して,効率を改善するための実験系の改善点が何点か挙げられるため,実験を遂行する上での問題点が顕在化した場合の対処法についても準備がある. さらに,溶液中における電極表面での酸化還元反応を考慮した分子動力学解析手法についても引き続き研究を遂行し,電極の電荷移動を伴うイオン流動の理論モデルについても更なる発展を試みる.
|