本研究は,量子分子流体科学の学術分野において,実験計測,シミュレーションおよび応用数学理論を駆使した新しい分子流動予測・評価法を考案することを目標とする.本課題は,難題として知られる超微細流体計測,量子力学と分子運動論の融合,量子化学理論の高度化に対して積極果敢に挑戦するものであり,これらのブレークスルーと統合化により,分子流体科学における学術体系の先導と先端機械の創製による直接的な社会貢献を目指している.特に,環境保全と高度医療への応用に取り組み,次世代電池,創薬および遺伝子治療開発に特化した独創研究を展開し,科学技術創造立国の理念を具現化する. 平成25年度までに,本課題で開発してきたイオン交換膜の局所破断面におけるイオン流動の可視化を実現し,流動場の計測を行うとともに,理論モデルを用いた検証を重ねてきた.この間,カリフォルニア大学サンディエゴ校に滞在する機会を得て,理論物理学を専門とするDi Ventra教授と共同研究を行った. 平成26年度には,電解質溶液に印加された電場に対するイオン電流の応答特性を理論的に解析し,現象の時空間スケールを明らかにした.さらに,局所的なイオン濃度を制御することにより溶媒の流動を誘起することができることを示した.イオン交換膜を介したElectrohydrodynamic流れを可視化し,その流れ場を実験と理論の両面から明らかにした.
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