研究概要 |
固体高分子形燃料電池の氷点下起動における触媒層内のマイクロ・ナノ凍結機構を明らかにし、耐氷点下起動性に優れた触媒層構造・起動方法を提示するとともに、通常運転時でのマイクロポーラスレイヤー近傍におけるマイクロ・ナノ水輸送現象を解明することを目的とし、可視化の高度化、定量化手法の確立を行った。さらに、これらを用いて種々の条件における凍結および水輸送現象を解析した。得られた主な成果を以下にまとめる。 1.触媒層内の凍結機構解明のために、新型クライオSEMにより高分解能の観察画像を得る手法を確立した。また、この画像を二値化することにより、触媒層内の厚さ方向の氷分布を評価することを可能とした。さらに、正確に初期湿潤状態の管理を行うことで再現性のある観察が可能であることを確認した。 2,申請者らが開発した凍結固定化法を用い、マイクロポーラスレイヤー近傍の凝縮水分布の観察および定量化方法を確立した。凍結固定化法とは、通常運転で運転した電池を急速冷凍し、凝縮水を固定化した後に氷点下環境で直接観察する手法である。これより、触媒層とマイクロポーラスレイヤー界面の凝縮水がフラッディングを引き起こす主な要因となっていることとともに、マイクロポーラスレイヤーの触媒層との良好な密着性が界面の凝縮水滞留を抑制し、耐フラッディング性を向上させることを明らかにした。さらに、クライオSEMによるマイクロポーラスレイヤー断面観察の有効性も確認した。 3.開発したクライオSEM観察により、運転条件が及ぼす触媒層内氷分布および凍結過程の特性を明らかにした。これより、氷点下起動においで凍結は触媒層内で高分子膜側から顕著に起こり、最終的なシャットダウン時にはガス拡散層側まで氷が生成されていくことが明らかとなった。さらに,高電流密度運転ほどこの過程における氷分布が大きくなることも確認した。
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