研究課題/領域番号 |
23686034
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田部 豊 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80374578)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 水輸送現象 / 凍結 |
研究概要 |
固体高分子形燃料電池の氷点下起動における触媒層内のマイクロ・ナノ凍結機構を明らかにし、耐氷点下起動性に優れた触媒層構造・起動方法を提示するとともに、通常運転時でのマイクロポーラスレイヤー近傍におけるマイクロ・ナノ水輸送現象を解明することを目的とし、凍結モデルの開発、MPL断面の詳細観察を行った。さらに、これらを用いて種々の条件下での凍結および水輸送現象の支配因子を検討した。得られた主な成果を以下にまとめる。 1.アグロメレートモデルを用いた触媒層解析に凍結モデルを組み込むことにより、種々の氷点下条件での凍結挙動を評価可能な解析モデルを開発した。これより、触媒層空孔内の酸素拡散係数と有効拡散係数の空隙率依存性を見直すことで、前年度までに得られた凍結挙動をある程度に再現可能であることを示した。 2.凍結挙動に及ぼす電流密度、温度、酸素濃度、空気圧力の影響を詳細に調べるとともに、上記解析モデルを用いて支配因子を詳細に解析した結果、凍結による触媒層内電気伝導性およびプロトン伝導性の変化という新たな因子も凍結挙動に影響を及ぼしている可能性が示唆された。 3.前年度に確立したMPL凝縮水の断面観察手法を発展させることにより、通常の運転条件では生成水はMPLを蒸気として通過していることを明らかとした。また、極端なフラッディング条件において、ガス流路下の位置では触媒層-MPL界面に、ランド下の位置ではMPL内空孔に氷が生成されている現象が観察された。さらに、触媒層をMPLに直接塗布した構造は、触媒層-MPL界面の凝縮水滞留を抑制させ、耐フラッディング性を向上させる可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に則した研究実施計画通りに研究を進めることができた。凍結機構の詳細な解析の結果、凍結過程において、触媒層内の電気伝導性およびプロトン伝導性の変化も凍結挙動に影響を及ぼすことが示唆され、こちらは新たな重要な課題として来年度につなげることができた。また、マイクロポーラスレイヤー内の水輸送現象については、マイクロポーラスレイヤー構造が凝縮水分布および電池性能に影響を及ぼすこと、それらが本手法により詳細に評価可能であることも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに凍結機構およびマイクロポーラスレイヤー近傍の水輸送現象の解明を進めて行く。ただし、氷点下起動における触媒層内の電気伝導性およびプロトン伝導性の変化の影響解明は新たな重要な課題として設定し、インピーダンス測定などを用いた詳細な評価を行っていく予定である。
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