本研究課題は、ナノ構造の温度分布を高精度にモニタリング可能な近接場蛍光熱顕微鏡を開発し、高度な熱制御に基づく近接場光学熱脱離を利用した自己組織化単分子膜の熱的ナノパターニング手法を新規に構築することを目的としている。ナノレベルでリアルタイムモニタリングしながら近接場光学熱脱離によるソフトかつクリーンなナノパターニングが実現すれば、ナノ熱工学に基づく革新的材料創成を我が国から先導することが可能となり、ナノ熱工学システムデザインと呼べる新しい学際領域を拓くことができ、学術的にも工学的にも意義深い。平成26年度は、これまでに開発してきた要素技術である近接場光学熱顕微鏡と近接場光学熱脱離法を高度化するとともに融合させることで、新しい熱制御と構造制御手法としての妥当性を明らかにした。具体的な成果を下記に示した。 1. 基板の新しい洗浄方法を提案し、更に溶媒の精製技術を導入することで、コンタミネーションの影響を低減した自己組織化単分子膜の修飾プロトコルを確立した。また、種々の自己組織化単分子膜への適用性について実験的に検討した。 2. フォトサーマル効果を高効率に誘起可能なメンブレン構造(形状、材質、膜厚等)をシミュレーションにより明らかにした。 3. KOHエッチング手法を用いたメンブレン基板の作製方法を提案した。KOH溶液に耐性のあるフォトレジストを用いることで、簡易にメンブレン構造を作製することが可能となった。また、成膜時にメンブレンの内部応力を制御することにより、高平坦なメンブレン構造を形成することに成功した。 4. 新しいスキャン手法を提案し、近接場制御の制御パラメータをチューニングすることで、安定して試料をスキャンすることが可能となった。また、パルス局所加熱により、自己組織化単分子膜をパターニングし、パターニングの構造評価により提案手法の妥当性を明らかにした。
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