研究課題
本研究課題は,動物実験レベルで生体に対して高精度かつ安全に動作する非侵襲超音波医療診断・治療統合システムの構築法を確立することであった。本研究で提案する非侵襲超音波診断・治療統合システムとは,呼吸や心拍動等により能動的に運動する患部を抽出・追従・モニタリングしながら,超音波を集束させてピンポイントに患部へ照射することにより,がん組織や結石の治療を患者の皮膚表面を切開することなく非侵襲(非観血)かつ低負担で行なおうとするものである。このうち,当該研究期間内に,システムのプロトタイプを構築し,動物摘出腎を対象とする基礎的実験を進めてきた。その結果,動物実験レベルで生体に対してわずか1mm(平均追従誤差)というきわめて高い精度での患部追従を実現するとともに高精度かつ頑健な追従を実現するうえで克服すべき最大の障壁となる,追従のための画像の質を劣化させるノイズ要因についても明らかにしてきた。本研究課題における成果は,国際会議における優秀論文ノミネーション,国際誌への投稿推薦・掲載など,国内外で大きな注目を集め,きわめて高く評価されている。また,関連する医療機器業界からも本技術に関連する数多くの問合わせが寄せられる。さらに,知財における特筆すべき成果として,本研究を展開するうえで最重要のコア基盤技術と位置づける出願特許が,その新規性・進捗性・産業上の有用性において高く評価されたことがあげられる。その結果,申請した全ての請求項に対してひとつの拒絶理由通知もなしに特許登録査定(特許第5311392 号)を受けた。このことは,本研究プロジェクトによって新規に開発・改良・蓄積してきたコア基盤技術群が既存の技術とは一線を画すものであり,今後,同様の超音波医療診断・治療機器の開発を推進するうえで有益なコア基盤技術群であることを如実に示すものと位置づける。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では,非侵襲超音波医療診断・治療統合システムの構築法に関する研究を推進しており,現在までに動物実験レベルで生体に対してわずか1mm(平均追従誤差)というきわめて高精度での患部追従を実現するとともに下記の5つのコア技術を基盤としてこれを改良・発展させてきた.(コア技術I) 人体に対する安全・安心接触動作技術(IEEE/ASME Trans. Mechatro誌への掲載),(コア技術II) 機能に応じた高精度機構設計技術(IEEE Trans. Roboticsへの論文掲載),(コア技術III) 超音波医療診断・治療技能における機能抽出・構造化技術(IEEE Trans. Roboticsへの論文掲載,特許第5368615号,特許第5311392号),(コア技術IV) 超音波診断・治療タスクに応じたシステム動作切替え技術(IEEE Trans. on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control誌への論文掲載),(コア技術V) リアルタイム医用超音波画像処理技術(International Journal of MedicalRobotics and Computer Assisted Surgery (医療ロボット分野の国際一流誌)への論文掲載).知財における特筆すべき成果として,本研究を展開するうえで最重要のコア基盤技術と位置づける出願特許が,その新規性・進捗性・産業上の有用性において高く評価されたことがあげられる。その結果,申請した全ての請求項に対してひとつの拒絶理由通知もなしに特許登録査定(特許第5311392号)を受けた。このことは,本研究プロジェクトによって新規に開発・改良・蓄積してきたコア基盤技術群が既存の技術とは一線を画すものであり有益なコア基盤技術群であることを如実に示すものと位置づける。
現在のところ,まずは,腎がん,腎結石に対象を絞り,マンパワーを集中した深堀研究を行っているが,本研究の波及効果は幅広い。なかでも,生体患部の運動補償技術は極めて有望な扇の要となる技術と位置づけており,今後は,これに関する深堀研究を進めると同時に,本技術の適用対象を拡大し,縦横に研究展開してゆく計画である。具体的に,乳がん,肝がん,骨腫瘍,膀胱結石,胆石等にも適用の幅を広げてゆくことが期待されており,また,超音波による内臓脂肪量計測における精度向上にも,本研究・技術の応用は強く期待されている。さらに,本研究はX線,陽子線,重粒子線,ならびに中性子線といった最先端のがん治療とも共通の技術課題を有していることから,重粒子線研究開発チーム等とシステムの安全性確保やこのためのガイドライン策定などに関する意見交換を行なう予定である。その他,透析肩の診断,心臓癒着評価をはじめとする心臓機能評価,血栓などの循環器疾患の診断・治療、腰痛・関節痛などの痛みの評価・治療,超音波ガイド下での穿刺生検やラジオ波による治療における体動補償にも本技術が応用展開できるものと期待している。具体的に,機能の信頼性を確保するため,上記の適用対象に対して,下記の4つの実験を通して機能の評価および改良を行なう。評価結果は設計指針にフィードバックされ,これをもとにシステムの改良を行ない,システムの機構・制御・画像処理アルゴリズム上で機能の高度化を図る。(実験1)In vitroでの結石/がんモデルおよび臓器ファントムを用いた診断・治療実験.(実験2)摘出動物臓器での結石/がんモデルを用いた、Ex vivoでの診断・治療実験.(実験3)結石/がん動物モデルを用いたin situでの診断・治療実験.(実験4)人体に対する診断実験.
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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http://www.nml.t.u-tokyo.ac.jp/~nkoizumi/paperList.html
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