研究課題/領域番号 |
23686046
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
下野 誠通 横浜国立大学, 工学研究院, 助教 (90513292)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ハプティクス / モーションコントロール / 制御工学 / 電気機器工学 / リニアモータ / 低侵襲性外科手術 / 触覚伝達 / バイオメカニクス |
研究概要 |
前年度に試作した鉗子型ハプティックシステムを用いた実験により、力覚フィードバック性能を損なわずに更なる多自由度化を実現するためには、新しいアクチュエーション技術の開発が必要不可欠であることが明らかになった。そこで本年度においては、電気機器工学に精通する研究協力者からの技術協力を得ながら、多自由度鉗子型ハプティックインタフェースのピッチ自由度とヨー自由度をダイレクトドライブで実現するための、円弧型シャフトモータの設計試作を行った。また、円弧型シャフトモータの基本特性の評価実験を実施するために、円弧型シャフトモータ試験装置を併せて試作した。電磁界解析ソフトウェアを用いた数値解析結果と試作機の基本特性評価実験結果から、試作したアクチュエータは実世界ハプティクスへの応用が十分可能であるとの知見を得た。 また、多自由度ハプティックシステムとシミュレータ環境との間での双方向インタラクションを実現するモーションコントロール技術に関する研究を実施した。双方向力覚フィードバック機能を有するバイラテラル制御システムと、視覚的動作支援を提供するシミュレータ環境とを統合することで、実世界ハプティクスにおける拡張現実感を実現することに成功した。シミュレータ環境からの仮想反力のハプティックシステムへの実装実験を行い、開発技術の有用性を確認した。 さらに、個人の身体機能を考慮したハプティックインタフェース設計論の確立を目指し、運動機能評価に関する実験研究を平行して実施した。筋電位センサと試作した運動機能評価実験用プラットフォームを用いて、上肢の手先出力と筋電位信号の測定実験を行った。機能別実効筋理論に基づいて健常者とリウマチ患者の測定結果を比較評価することで、リウマチ患者の肘関節周りの筋萎縮が運動機能に対して与える影響を調査した。開発技術が医療支援のみならず福祉支援へも応用可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
力覚フィードバック性能を損なうことなくハプティックシステムの更なる多自由度化を実現するためには、新しいダイレクトドライブアクチュエーション技術の開発が必要不可欠であるとの認識に至ったが、それには極めて大きな困難が伴うことが予想されていた。しかしながら、電気機器工学に精通する研究協力者と有機的に連携することにより、開発研究を順調に遂行することができた。その結果、新たに試作開発した円弧型シャフトモータの基本特性評価実験まで完了することができた。この革新的なリニアモータの実現に成功したため、当初の研究計画で想定していたよりも、独創的なハプティックシステムの開発が可能となった。また、当初は開発技術の応用範囲は医療支援のみを想定していたが、予想外の進展により福祉支援応用への新たな展開がもたらされた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得た円弧型シャフトモータの試作開発という大きな研究成果を受け、円弧型シャフトモータのためのモーションコントロール技術の開発研究を実施する。この極めて独創的なアクチュエーション技術をさらに深化させることで、革新的な多自由度ハプティックシステムの実現が期待される。しかしながら、当初の研究計画では予想していなかったこのような新しい成果を得たために、開発技術を段階的に発展させた方が、当初期待していたよりも大きな成果が確実に得られると思われる。したがって、当初の研究計画を若干変更し、円弧型シャフトモータの高推力化に向けた改良研究と、ハプティック鉗子のピッチ自由度とヨー自由度の実現に向けた円弧型シャフトモータに基づく二自由度四軸バイラテラルプラットフォームの試作開発を実行する。
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