研究課題/領域番号 |
23686047
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 恭 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335379)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 微小磁性体 / スピン / 高周波磁界応答 / コプレーナ伝送線路 / MFM用探針 / 振幅変調方式 / MFM |
研究概要 |
本研究課題ではGHz帯における新規高周波スピン計測技術を確立し、本計測技術を用いて微小磁性体におけるスピンの高周波磁界応答を解明する。得られた知見と元にして、微小磁性体からなる新規スピン機能素子の創製を目指す。本年度は以下の事項を検討した。(1)高周波スピン計測技術の構築とその妥当性:線路幅3μmの信号線を有するコプレーナ伝送線路(CPW)に高周波信号発生器(SG)と任意波形発生器(FG)を用いて高周波プローブを介して搬送波と変調波からなる振幅変調波信号を入力した。その際に、磁気力顕微鏡(MFM)用探針を含むSiカンチレバーへの電界効果を抑制するために、カンチレバーとCPWの等電位化を試みた。その結果、電界効果を十分に抑制することに成功した。また、CPW上から700 nmの高さに固定して軟磁気特性を有するNi-Fe膜をコートしたMFM用探針を走査すると、1.1GHz帯においてCPW上で発生する近傍磁界分布を検出できることを明確にした。以上より、Ni-FeコートしたMFM用探針を高周波磁界検出センサに、GHz帯での高周波磁界の検出が可能なスピン計測技術を確立した。(2)微小磁性体におけるスピンの高周波磁界応答の評価:隣接ドット間距離の異なるNi-Fe楕円形ドット列(長軸と短軸の比が2:1、長軸:400 nm、短軸:200nm)を作製し、無磁界中での静磁気特性をMFMにより確認した結果、ドット間距離50nm以下の場合に静磁気的相互作用の影響により単磁区構造から磁化の向きが反対方向の単磁区構造へ遷移していることがわかった。また、その動的磁気特性をCPWによる強磁性共鳴測定を行ったところ、ダンピング定数がバルクや薄膜に比べて2倍近く増大することがわかった。これらの結果から、隣接ドット間を可変させた場合の微小磁性体におけるスピンの高周波磁界応答に関する基礎データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画の通り、電界効果を抑制することにより、GHz帯での振幅変調方式によりMFM用探針により高周波近傍磁界のみを検出することが可能であることと、隣接ドット間を調整することにより微小磁性体に関する動的磁気特性を得ることができることを明確にしたことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に関してはおおむね順調に進展しているので、最終年度は、開発した振幅変調方式による高周波スピン計測技術を用いて、CPW上に集積化した微小磁性体列におけるスピンの高周波磁界応答に関する基礎データを取り、スピンの高周波磁界による制御法を提案し、新規スピン機能素子の構築を目指すとともに、本計測技術の応用展開を提案する。
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