研究概要 |
(1)2段階光電変換の実証:代表者のこれまでの研究により構造制御手法が確立されているIn_<0.2>Ga_<0.8>As(4mm)/GaAsα凸6(3mm)超格子を含む太陽電池をMOVPEにより成長し,光電変換におけるInGaAs吸収端以下のエネルギーを持つ長波長光(以下,赤外光と称する)の効果を検証した.現有の分光量子効率測定装置を改造し,室温で赤外光をチョッピング照射しながら単色光入射時の量子効率を測定した.その結果,GaAsバルクの吸収端より長波長側のInGaAs井戸による吸収波長域のみにおいて,赤外光の照射による量子効率の増大を観察した.超格子挿入太陽電池において2段階光電変換の証拠を観察したのは世界初である.現状で観察された量子効率の増分は0.5%程度と変換効率の増大に寄与するには小さすぎるため,量子井戸の構造を改良することで2段階光電変換による量子効率の増大を図る必要がある.障壁層の厚い量子井戸の場合や,外部からpn接合に逆バイアスを印加した場合には2段階光電変換は観察されなかったことから,超格子内のミニバンド形成が2段階光電変換の鍵になっていると考え,さらに検証を進める予定である. (2)窒化物半導体歪み補償量子井戸成長技術とin situ歪み観察技術の確立:従来用いられてきた圧縮歪み系のInGaN/GaN量子井戸に代えて,格子定数の小さなAlNを障壁に用いたInGaN/AlN歪み補償量子井戸の成長を試みた.歪み補償により,XRD対称スキャンで4次のサテライトピークまで観察される高品位な量子井戸を30層成長することに成功した.種々の構造を成長して検討した結果,量子井戸の0次ピークが下地GaNに近い,つまり歪み補償がより完全な構造ほど,XRDサテライトピークがより鋭く観察され,フォトルミネッセンス強度もより大きいことから,より高品位な結晶が成長できていることが推察された.また,ウエハ曲率のin situ観察装置を導入し,InGaN/AlN量子井戸成長に伴う歪みの蓄積がリアルタイムで観察可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,In_<0.2>Ga_<0.8>As(4nm)/GaAs_<0.4>P_<0.6>(3nm)量子井戸における2段階光電変換を観察することに成功した.また,計画通りInGaN/AlN歪み補償量子井戸成長の第1段階トライアルと,ウエハ曲率のin situ観察装置の導入を遂行することができた.
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今後の研究の推進方策 |
導入したウエハ曲率のin situモニタリング装置を使いこなし,歪み補償による高品位InGaN/AIN量子井戸の結晶成長技術を確立する.とくに,低温成長するAlN層に欠陥が多く含まれキャリア取り出しに支障をきたすことが予想されるので,量子井戸をまたぐ方向の電子伝導特性を調査し,パルス成長法等による結晶品位の改善に努める.以上の結果を踏まえて,InGaN/AlN量子井戸を挿入した太陽電池の試作に進む.
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