研究概要 |
フォトニック結晶は固体結晶と同様に周期性をもち,光のエネルギーに対するフォトニックバンドが形成され,光モードの制御が可能になる.本研究課題の対象となる太陽電池は,光電変換材料において光を吸収し,キャリアを発生させることで,光を電気エネルギーへ変換するデバイスであり,いかに光の捕獲・吸収を効率よく行うかが,重要なポイントである.今年度は,まず,フォトニック結晶の光共振作用と材料固有の吸収効果をモード結合理論にあてはめ,フォトニック結晶における光吸収現象のモデル化を行った.その結果,フォトニック結晶中において光が閉じ込められる光子寿命と光吸収係数で光子が失われる光子寿命が一致した整合条件において,フォトニック結晶中の光吸収割合が最大になるという解析結果が導かれた.これは,フォトニック結晶閉じ込め効果の光子寿命が,外部からフォトニック結晶への光取り込み効果の逆数を表わすため,光子寿命が大きすぎると,フォトニック結晶への光捕獲効果が小さくなり,入射光がフォトニック結晶で反射される一方で,光子寿命が小さすぎると,フォトニック結晶中で吸収される前に,一旦捕獲された光がフォトニック結晶から放射されてしまうという物理現象を表わしている.また,整合条件下で,フォトニック結晶の裏面に反射鏡を導入し,反射鏡とフォトニック結晶の距離を反射波の位相が一致するように調整することで最大100%の光吸収が得られるという設計指針も得られた.さらに,フォトニック結晶効果としては,フォトニックバンド端と呼ばれる特異点のうち,対称性が低い電磁界分布をもつモードを用いることで,外部からの入射光に対し,フォトニック結晶全体での共振条件が得られることを有限時間領域差分電磁界解析によって,確認した.また,検証実験に向けて,シリコン材料を用いたフォトニック結晶の試作にも着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料固有の光吸収効果を上回るフォトニック結晶による光吸収増大効果の発現へ向けて,一般的な設計指針を導くことが今年度の第一の目的であり,加えて,フォトニック結晶のシミュレーション法の確立と試料試作の着手が当初の目的であったが,研究実績の概要に示すように、それらの目的を順調に達成することができたため,本研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた一般的な設計指針を受けて,フォトニック結晶による光吸収増大効果の実証へ向けたより具体的な構造を電磁界シミュレーションで探求していく.ここで,材料固有の吸収効果も最終的にフォトニック結晶効果を発現させるにあたり,重要なパラメータであることが判明したため,半導体中のドーピング量で変化させて,検証することも考えている.その際,フォトニック結晶の特徴である,格子定数に対する波長のスケーリング則を活用することで,原理実証が容易な波長帯での検証を行うことも検討している.
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